2012 Fiscal Year Annual Research Report
Gブラウン運動に対する確率解析と非線形熱方程式への応用
Project/Area Number |
12J04442
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大須賀 恵実 東北大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | G-ブラウン運動 / 大偏差原理 / ラプラス原理 / 変分表現 |
Research Abstract |
本研究の目的は,非線形熱方程式の粘性解を,G-ブラウン運動を用いた確率論的手法によって解析し,最終的には非線形偏微分方程式論においてまだ知られていない粘性解の振る舞いを導くことである.そのための基礎となる研究として,本年度はブラウン運動の性質や,通常の確率解析において知られている公式が,G-ブラウン運動の場合にも成り立つかを調べた.具体的には以下の研究を行った.私は昨年度までにG-ブラウン運動に対するギルサノブの公式を得た.本年度は,G-ブラウン運動に対するギルサノフの公式を応用することで,Bou6-Dupuis(1998)の結果のG-期待値空間の枠組みへの拡張として,G-ブラウン運動の汎関数に対する変分表現を導出した.この変分表現の動機の1つは,G-ブラウン運動に対する大偏差原理にある.与えられた確率変数の族が大偏差原理を満たすための同値な条件として,ラプラス原理がある.本年度得た変分表現は,確率変数の族がG-ブラウン運動の汎関数から成る場合に,そのラプラス原理の導出に対して有用である.例として,G-ブラウン運動に対するシルダー型のラプラス原理と,G-ブラウン運動とG-ブラウン運動の2次変分の組に対するラプラス原理を示した.これらの族に対する大偏差原理は,オリジナルにはGao-Jiang(2010)によって離散近似の手法を用いて示されている.今回得た変分表現を用いることで,彼らの与えた証明を簡略化することができた.またBoue-Dupuis(1998)の結果がそうであるように,G-ブラウン運動の汎関数に対する変分表現は,より一般の確率変数の族に対するラプラス原理の導出に対しても応用できると考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は通常の確率解析において知られていた公式のG-ブラウン運動の理論への拡張として,G-ブラウン運動の汎関数に対する変分表現を得ただけでなく,その変分表現を用いてG-ブラウン運動や,G-ブラウン運動とその2次変分の組に対するラプラス原理を導出することができ,これにより大偏差原理が得られるた.さらに,ラプラス原理を用いることで確率制御問題へG-ブラウ運動の理論を応用できることが期待されるなど,ラプラス原理は劣線形期待値空間上の確率解析のさらなる発展を含んでいるため.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の方策は2つある.1つはG-ブラウン運動の理論をさらに発展させることである.具体的には,G-ブラウン運動の汎関数に対して,本年度得た変分表現とは異なる形の変分表現を与えたい.G-ブラウン運動に対するギルサノブの公式をさらに応用することで,本年度得た変分表現とは異なる形の変分表現を与えることが期待されている.またその変分表現を用いて,新たな確率変数の族に対してラプラス原理・大偏差原理を導きたい.もう1つは非線形熱方程式への応用である.上の変分表現やラプラス原理・大偏差原理を,本年度までに得た結果と併せて応用することで,非線形熱方程式の粘性解の解析へG-ブラウン運動の理論を応用したい.
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Research Products
(6 results)