Research Abstract |
本年度では,磁気ギアの実用化を目指し,磁気ギアの回転子磁石材料・構成に関する検討,およびRNAによる最適設計手法の確立に関する検討を行った。 回転子磁石材料・構成に関する検討では,極異方性ボンド磁石を適用した磁気ギアのトルク特性について評価を行った。その結果,ボンド磁石の磁気特性は焼結磁石に劣るが,極異方性着磁を採用することで,同等以上のトルクが得られることが明らかになった。また,磁気ギアの損失と効率について検討を行った。極異方性ボンド磁石を採用することで,従来の焼結磁石を用いた磁気ギアに対して,損失が約80%低減され,効率が99%以上に達することを解析により示した。 また,RNAによる最適設計手法の確立に関する検討では,磁気ギアのRNAモデルを導出し,定常特性についてFEMと比較・検討を行った。その結果,導出したRNAモデルを用いることで,伝達トルクおよびギャップ磁束密度分布を精度良く算定できることを明らかにした。また,RNAと最適化プログラムを併用した磁気ギアの最適設計について検討を行った。その結果,RNAによって導かれた最適な寸法の組み合わせは,FEMを用いた場合とほぼ一致すること,得られた伝達トルクの値もほぼ等しいことが明らかとなった。また,最適値の探索にかかる時間は,RNAが7分,FEMが6時間と,RNAの方が非常に短いことを示し,本手法の有用性を明らかにした。 以上の検討結果を踏まえ,試作磁気ギアによる実機試験を行い,試作および実装時における留意点について検討した。初期の試作磁気ギアでは,支持材として用いたアルミニウムに渦電流損失が生じ,効率低下につながった。そこで,支持材を非磁性かつ非導電体であるベークライトに置き換えた改良機を試作したところ,最大効率は約96%以上に達した。これは,機械式ギアと同等以上の効率であり,磁気ギアの実機試験において96%以上の高効率を達成した検討は本研究が初めてである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,磁気ギアの産業分野への幅広い応用を目的としている。本年度に検討を行った損失低減および最適設計手法は,磁気ギアの実用化に必要不可欠であり,また,試作磁気ギアにおいて最大効率96%以上と,従来の機械式ギアと同等以上の効率を達成したことから,本研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
試作磁気ギアを用いた実機試験において,支持材として用いたアルミニウムに生じる渦電流損失が効率低下につながり,新たな課題となった。磁気ギアを実用化する際には,特に中~大型機において,支持材に金属を用いることが必須になると考えられる。今後は,磁気ギア本体ばかりでは無く,支持材の材質や形状および配置なども含めた検討を行い,超高効率磁気ギアの実現を目指す。 また,得られた検討結果を用いて,新規的なアプローチとして,磁気ギアー体型発電機の開発を行う。容量は1~2kW程度とし,現有の小型風力発電機を用いて試験を行い,基準値を決定する。
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