2012 Fiscal Year Annual Research Report
養育行動の生物学的基盤 ~ニホンザルを用いての検討~
Project/Area Number |
12J04561
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐藤 杏奈 京都大学, 霊長類研究所, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 養育行動 / 幼児図式 / 選好注視法 / 視覚対呈示法 |
Research Abstract |
本年は、養育行動の生物学的な基盤を探るという自身のテーマのために、修士課程の頃中心に行っていた課題に加え、新たなアプローチを使って研究を実施した。日本学術振興会の申請書にも記載した、視覚対呈示法という手法で、被験体の弁別能力を検討することを目的に、霊長類や乳児を対象として広く用いられている手法である。修士課程で行った選択的注意をみるドットプローブ課題とは異なり、特別な訓練を必要とせず、自然な反応を引き出すことができる。また、弁別能力と合わせて選好性も検討できる可能性も持っている。この視覚対呈示法をニホンザルに実施し、その成果を論文にまとめて投稿した。 多様な社会経験を持つ個体を用いて、比較研究を行うために、移動式の実験装置も新たに設計開発・導入した。従来は、研究室の所有している個別飼育のサルを対象に、キャリングケージで実験室まで運搬し、実験を行っていたが、移動式の実験装置を用いることで所内のあらゆるところに飼育されている個体を対象に実験を行うことができる。 また、8月に行われた国際霊長類学会では、世界各国の霊長類学者と積極的に交流し、自身の研究を世界に発信することができた。そのほか、国内の学会にも精力的に参加し、日本霊長類学会及び、人類学若手の会研究集会で口頭発表を行い、日本動物行動学会、SAGA15アジア・アフリカにすむ類人猿を支援する集いではポスター発表を行った。このような学会参加では、自身の研究を広めるだけでなく、様々な研究分野における最新の知見に触れ、情報収集を行うことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、視覚対呈示法に加え選好注視法を用いて研究を行ってきた。論文を一本掲載することができたという点は満足しているが、研究の目的である養育行動の生物学的な基盤を探るため、より様々な社会経験を持つ個体を用いることや生理学的な指標を取り入れることを目標にさらに研究を深めていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の研究をふまえ、本年度は可動式ケージを用いて所内にいる数多くの個体を対象に実験を行う予定である。 霊長類研究所には、様々な社会経験を持つニホンザルがいるため、個体のヒストリーをそろえて群間比較することが可能である。昨年度に設計した可動式ケージを用いることによって、研究室の所有しているニホンザルがいる建物以外の飼育舎にも出張して実験ができるため、研究の幅が広がるだろう。また、妊娠個体を対象とした実験を長期的に実施し、群間比較するだけでなく個体のライフステージの変化も加味した研究を行うことを計画している。 これらのことに加え、今年度はホルモン分析など、生化学的な指標を用いた研究も考えている。
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Research Products
(5 results)