2013 Fiscal Year Annual Research Report
養育行動の生物学的基盤 ~ニホンザルを用いての検討~
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12J04561
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐藤 杏奈 京都大学, 霊長類研究所, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 養育行動 / 幼児図式 / 選好注視法 / 内分泌動態 |
Research Abstract |
本年は、昨年度行った視覚対呈示法以外に、選好注視法という手法も交えた研究を行った。選好注視法は、視覚対呈示法よりもシンプルな手続きの手法で、左右に二枚の画像を呈示し注視時間を測定するもので、特別な訓練は必要とせず、自然な行動をみることができる。ニホンザル以外に同じマカク属のアカゲザルも加えて、この選好注視法を実施した。刺激画像としては、オトナの顔画像と乳児の顔画像及び、オトナの全身画像と乳児の全身画像を使用した。その結果、顔画像では、オトナ画像と乳児の画像で注視時間に有意差は見られなかった。乳児の持つ物理的な特徴が周囲のオトナの注意を引きつけることは、動物行動学者のローレンツによって、提唱されているが、その乳児らしさの指標となる特徴は、顔に限定されない。確かに大きな瞳やちいさな鼻や口といった顔にみられる特徴はヒト研究においては、重要視されているが、短い手足や身体全体における頭部の占める割合なども乳児の大きな特徴の一つである。また、妊娠期や授乳期の特定のライフステージにおけるメスの乳児選好性に関しても実験を行った。個体数が十分ではないので、来年度も引き続き同様の実験を続ける。これらの個体を含めた様々な社会条件のニホンザル・アカゲザルを対象に尿サンプルの収集も並行して行い、サンプルの一部を3月に分析し、オキシトシンの値を計測した。次年度もこの実験を継続し、内分泌動態と行動と乳児選好性の関連を調べる研究を麻布大学との共同研究ですすめていく。 8月に行われた国際動物行動学会では、世界各国の行動学者と積極的に交流し、自身の研究を世界に発信することができた。そのほか、国内の学会にも精力的に参加し、日本霊長類学会及び動物心理学会ではポスター発表を行った。このような学会参加では、自身の研究を広めるだけでなく、様々な研究分野における最新の知見に触れ、情報収集を行うことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、30頭以上の個体を対象に多様な刺激を用いて行動実験を行うことができた。様々なライフステージにおけるメスを対象に、行動実験及び、尿のサンプリングをし、内分泌動態と行動との関連を調査する足がかりができたのは、来年度につながる大きな成果と言える。また、修士の際に行った研究の一部も論文にまとめることができた。次年度も、引き続き妊娠前後期のメスの行動実験及び採尿を続け、個体数を増やして結果を論文にまとめられるよう邁進するのみである。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は可動式ケージを用いて所内にいる数多くの個体を対象に実験を行った。次年度も、この可動式ケージと新たに開発した個別ケージに取り付ける実験装置を用いることによって、研究室の所有しているニホンザルがいる建物以外の飼育舎にも出張し、数多くの個体を対象に実験を行う予定である。また、出産前後期における個体を対象とした内分泌動態と行動との関連を調べる実験に関しても、昨年度の妊娠個体では数が足りないため、今年度も実施したい。その際、昨年度のノウハウを生かしてより細かく尿のサンプリングをし、そのオキシトシンを測定し乳児選好性をもたらす生理的な因子の探求に努めていきたい。
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Research Products
(3 results)