2013 Fiscal Year Annual Research Report
情報化社会における"集合知"の発生メカニズムに関する社会生態学的検討
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12J04583
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
豊川 航 北海道大学, 大学院文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 集合知 / 多腕バンディット問題 / 探索と収穫のジレンマ |
Research Abstract |
【動物心理学研究へ論文の掲載】 『ヒトと動物の「集団意思決定」をつなぐ』という題の総説論文が、動物心理学研究に掲載された。 社会心理学を中心にこれまでなされてきた人間の集団意思決定の研究と、動物行動学にて行われてきた動物の集団意思決定の研究との間には、依然として隔たりがある。しかし、前述のように「動物の群れが作る現象」という広い枠組みの中で集団意思決定を捉えると、これまでには浮かばなかった新しい問いが生じ、双方の学問分野へ新たな研究文脈をもたらすだろう。集団意思決定に対するこのような視点は、それ自体、概念的に新しく、整理された総説として世に問う価値のあるものである。 【国内誌 北海道心理学研究および国際誌PLoS ONEへの論文掲載】 集約型意思決定状況としてMulti-Armed Bandit問題という不確実性の伴う環境での最適選択課題を用い、実験室で実験を行った。参加者らは5人一組となり、互いに他のメンバーの行動を観察する事が可能であり、社会的学習をすることができた。実験には2つの条件があり、1つは社会情報として他のメンバーの選択行動(選択頻度)のみが観察できる条件。2つ目の条件では、選択頻度情報に加えて、近年様々なインターネットサイトで利用されているような、各メンバーが自由に付けた5点満点の「口コミ」評価点をも参照することができた。 実験の結果、個人あたりの意思決定のパフォーマンスは、「口コミ」を利用できる条件の方がむしろ低くなっていた。「口コミ」は、選択肢の質を表す情報量のあるシグナルとなっていたにも関わらず、もう1つの社会情報であった頻度情報にくらべノイズが大きく、参加者はかえって混乱してしまった。このことから、集約型意思決定における情報伝達のメディアはシンプルな方が、意思決定のパフォーマンスを向上させるということが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
情報化社会における集合知発生のメカニズムに関して、2本の原著論文へまとめられ発表させるとともに、集合知という現象を含む幅広い「動物の集団意思決定」についての理論を統合する総脱論文を発表した。予定通りの順調な進展であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究は、個人間のリアルタイムな相互作用を含む集団ダイナミクスに重きをおいた実験が主であった。今後は、より個人レベルのプロセスに焦点を当てた実験を行う予定である。具体的には、アイトラッカーや生理指標を用いて、個人レベルの社会的学習戦略を測定する。
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Research Products
(5 results)