2012 Fiscal Year Annual Research Report
脱細胞化臓器と増殖因子導入ゲルから成る肝臓の再構築技術の創出
Project/Area Number |
12J04676
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
白木川 奈菜 九州大学, 工学研究院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 脱細胞化 / 肝臓 / 体外循環 |
Research Abstract |
臓器規模の血管網構築の足場として、本研究は脱細胞化肝臓を足場として用いる。そのため、この足場の血管構造が重要である。しかし、その構造は樹脂によりかたどりした後、外観でしか評価されてこなかった。そこで、かたどりした樹脂を3D-CTにかけることで、その数値データの取得をおこなった。得られたデータから、組織断面積あたりの血管密度を比較したところ、実現象に即した妥当な評価法を確立でき、さらに脱細胞化肝臓が正常肝臓とほぼ同等の緻密な血管構造を維持していると示唆された。一方で、脱細胞化肝臓に含まれるDNA量を正常肝臓と比較したところ、非常に少ないことが示唆された。 また、脱細胞化肝臓内部の血管網周囲に肝細胞を配置する方法の最適化を行った。取得した脱細胞化肝への肝細胞の播種方法としては、コラーゲンゾルに懸濁した肝細胞を針付きシリンジで周囲から複数個所注入して播種する方法が最適であると示された。 本研究では肝臓由来の酵素である組織トランスグルタミナーゼを用い増殖因子の固定化とゲル化を同時に行う。そこで、酵素の基質部位を付与した組み換え増殖因子(bFGF-tag)を設計し、レトロウイルスベクターを用いてCHO細胞において生産を行った。生産したbFGF-tagが活性を有し、定量的に測定可能なことが示唆された。さらに組織トランスグルタミナーゼにより生産したbFGF-tagが固定化可能なことが期待された。 脱細胞化肝臓を足場として作製した肝組織の移植を行うために、今まで門脈しか確保してこなかったが、肝静脈も確保するようにした。ラットの頸動脈から血液を体外循環し、脱細胞化肝臓を経て頸静脈から血液を戻すという循環ラインの構築を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度に予定していた研究計画はステップアップ的なものであったが、実際は各ステップごとにそれぞれ研究を進め、肝臓の再構築という大きな目標に対して、複数の要素技術を開発することができた。具体的には、前年度までに確立した臓器鋳型を用いて、その内部の血管鋳型の構造解析や血管網構築後の肝細胞播種方法の最適化、構築した肝臓を評価するための肝不全ラットに対する適用法等の様々な要素技術を確立した。さらに、医学や機械科学等の研究者達と積極的に連携し、自身の知識と考え方を広げ、課題の達成に向けて大きく前進することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
脱細胞化肝臓の解析については、取得した血管構造の3次元数値データを基に、血液流入やそれによる酸素供給量から周囲に配置する肝細胞密度の最適化を行う。また、脱細胞化肝臓に含まれるDNA量の再現性の評価や、脱細胞化肝臓の組成評価を行う。 増殖因子導入ゲルの開発については、固定化量や固定化効率のより定量的な評価を行い、固定化後の活性評価やゲル化能の評価等に進んでいきたい。 移植用肝組織の作製については、ラットにおいて体外循環ラインにより、内皮化した脱細胞化肝臓の評価や作製した肝組織の機能評価を予定している。
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Research Products
(8 results)