2012 Fiscal Year Annual Research Report
インビボ特定神経における可逆的遺伝子発現制御を用いた睡眠覚醒制御機構の解明
Project/Area Number |
12J04733
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Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
田淵 紗和子 総合研究大学院大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | オレキシン / セロトニン / 睡眠覚醒 / Tet-off / Htrla |
Research Abstract |
本研究では、ドキシサイクリン(DOX)の有無により特定の神経細胞において特定の遺伝子発現を可逆的に制御可能なTet-offシステムを用いてオレキシン神経細胞に対するセロトニン神経からの抑制性入力が持つ生理的役割について個体行動実験で明らかにしてした。オレキシン神経特異的にtTAを発現する遺伝子改変マウスとtTA依存的にセロトニン受容体1A(Htrla)の発現させるマウスを交配しorexin/tTA;Tet0 Htrlaマウス)を作成した。In situ hybridizationの結果から、オレキシン神経特異的にHtrla mRNAが過剰発現誘導されていることを確認した。DOX含有餌を与えると、オレキシン神経におけるHtrlaの過剰発現がcontrolと同程度に戻ることを確認した。再びDOXを餌から除去すると、再度Htrlaの過剰発現が認められた。このことから、DOXによるオレキシン神経特異的なHtrlaの可逆的発現制御が可能であることを確認した。次に、電気生理学的解析によって、オレキシン神経に対するセロトニン抑制効果を検討した。その結果、Htrlaの過剰発現状態ではセロトニンの投与により神経活動の抑制が約2倍長く持続することがわかった。次にOrexin/tTA;Tet0 Htrlaマウスから脳波および筋電図を記録し、睡眠覚醒パターン解析を行った。その結果、Htrlaの過剰発現状態では、暗期初期において睡眠覚醒の著しい分断化が観察された。DOXによりHtrla発現量を元に戻すと、暗期初期にみられた睡眠覚醒の分断化が消失し、野生型マウスの睡眠覚醒に近いパターンを示し、長時間起き続けられるようになった。これらの結果から、オレキシン神経とセロトニン神経が形成する負のフィードバック回路は、暗期初期に機能し、オレキシン神経活動を適切な範囲に留めるのに重要であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
オレキシン神経特異的なHtrlaの可逆的発現制御が可能であることをIn situ hybridization法を用いて確認した。電気生理学的解析を行った結果、Htrla過剰発現状態ではオレキシン神経はセロトニンの投与により約2倍長く抑制されることを確認した。さらに、脳波および筋電図記録による睡眠覚醒パターン解析の結果から、オレキシン神経とセロトニン神経間の負のフィードバック回路の生理的役割を明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、強制水泳試験や高架十字迷路などの行動テストバッテリーを行い、睡眠覚醒以外におけるオレキシン神経とセロトニン神経間神経回路の重要性を検討する。さらに、睡眠障害の一つであるナルコレプシーのモデルマウス作成および解析に取り組む。時期特異的にジフテリアトキシンA断片をオレキシン神経で時期特異的に発現させ、オレキシン神経を任意の時期に脱落可能なマウスを作成する。このマウスを用いて、オレキシン神経細胞数とナルコレプシー発症との関係を詳細に検討する。
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Research Products
(4 results)