2013 Fiscal Year Annual Research Report
インビボ特定神経における可逆的遺伝子発現制御を用いた睡眠覚醒制御機構の解明
Project/Area Number |
12J04733
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Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
田淵 紗和子 総合研究大学院大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ナルコレプシー / Tet-offシステム / オレキシン神経 / 睡眠障害 |
Research Abstract |
本研究では、睡眠障害のひとつである「ナルコレプシー」に着目した。ヒトのナルコレプシー発症原因は、オレキシン神経の特異的な脱落である。これまでのナルコレプシー研究では、生後直後からオレキシン神経が脱落する遺伝子改変マウスやオレキシン遺伝子欠損マウスなどが用いられてきた。しかし、ヒトでは思春期または成人期初期に好発することが知られているため、これまでのモデルマウスでは不十分であり、発達段階で別の神経回路による機能補償などが生じている可能性が高い。そこで、Tet-offシステムを用いて任意のタイミングでオレキシン神経特異的にジフテリア毒素A断片(DTA)を発現させ細胞死を誘発できる、新規ナルコレプシーモデルマウス(orexip-tTA ; Te tO DTAマウス)を作製した。このマウスでは、DOX存在下ではオレキシン神経は正常に保たれ、DOX非存在下ではDTAの発現が誘導されるため、オレキシン神経が細胞死を起こす。胎児期からDOX存在下で飼育し、その後10週齢に達した段階でDOXを除去し、免疫染色によってDOX除去とオレキシン神経細胞数との関係を検討した。その結果、DOX存在下ではオレキシン神経細胞数が野生型と同程度に保たれているが、DOX非存在下1週間後では86%、2週間後では95%のオレキシン神経が脱落していた。次に、同一個体から脳波筋電図を記録し、オレキシン神経細胞数とナルコレプシー症状発現との関係を検討した。その結果、86%のオレキシン神経が脱落すると睡眠覚醒の分断化が生じ、95%のオレキシン神経が脱落すると睡眠覚醒の分断化に加え脱力発作が観察された。これらの結果から、正常な睡眠覚醒を保つには15%以上のオレキシン神経細胞数が必要であり、それ以下になると睡眠覚醒の分断化や脱力発作などのナルコレプシー症状が発現することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
オレキシン神経を時期特異的に脱落させられる、新たなナルコレプシーモデルマウスの作製に成功した。 組織学的解析、行動学的解析を組み合わせ、オレキシン神経細胞数とナルコレプシー症状発症との関係を明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒトのナルコレプシーでは、症状に個人差がある。そこで、今回作製した新規ナルコレプシーモデルマウスを用いて、さまざまな症状を呈すマウスを作製する。このマウスを用いて、新たな治療薬となりうる様々な受容体の拮抗薬などを投与し、症状に与える影響を検討する。
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Research Products
(2 results)