2013 Fiscal Year Annual Research Report
磁気流体・輻射磁気流体数値実験による相対論的ジェットと周辺環境相互作用の研究
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12J04786
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
朝日奈 雄太 千葉大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 磁気流体 / ジェット / 星間ガス / 衝撃波 / 分子雲 |
Research Abstract |
銀河系中心で観測されているタワー状の分子ガスやWesterlund2方向で観測された直線状と円弧状の分子ガスの形成機構を調べるために、星間ガスの加熱・冷却過程を考慮したジェット伝播の磁気流体計算を実施した。初期状態は1万度の温かいガスと200度の中性水素(HI)ガスの2つのガスが熱平衡・圧力平衡で接しているとし超音速ジェットを注入した。分子タワー形成計算ではケプラー回転しているHIガスを仮定した。HIガスはジェットの前方に形成されるバウショックによって加熱・圧縮されるが、密度増加により冷却率が上昇し、結果的に温度が下がり、さらに密度が上昇した。このような冷却不安定が誘起されることによりジェットを包み込むタワー状の低温高密度領域が形成された。またHIガスが回転していることで観測されている視線速度差を説明できる可能性を示した。 さらにWesterlund2方向で観測された形状の異なった分子ガスの形成機構を調べるためにHIガスのフィリングファクターを変化させた計算を実施した。初期状態はフィリングファクターが大きいモデルでは半径の大きなHIクランプが1つ存在するとし、フィリングファクターが小さいモデルでは半径の小さなクランプが無作為に分布しているとしてジェットを注入した。分子タワー形成計算と同様にジェットの衝撃波によってHIガスが圧縮されることで冷却不安定が誘起され、ジェットの周囲に低温高密度な領域を形成した。フィリングファクターが大きい場合は、ジェットは全てのHIガスを前方に掃き集めるため円弧状の低温高密度領域を形成する。それに対して、フィリングファクターが小さい場合は、ジェットはHIクランプの間を伝播できるため低温高密度領域はよりジェット軸方向に広がった分布になる。以上の結果から初期のHIガス分布によって形成される分子ガスの分布を説明できるのではないかと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分子タワー形成シミュレーションについては、中性水素ガスの回転を考えることで観測で得られている分子ガスの視線速度差を説明できる可能性を示した。Westerlund2方向の分子ガスの形状については中性水素ガスの分布を変化させることで説明でき、また周辺密度分布によりジェットの構造や伝播速度が変化することも示せた。
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Strategy for Future Research Activity |
中性水素ガスの初期状態の調整を行い観測と比較する。その後非等方な輻射を扱える相対論的輻射磁気流体コードの開発を進め、降着円盤を含めたジェット形成の計算を実施することで、周辺環境がジェットの終端速度や構造にどのような変化を与えるのかを調べる。
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Research Products
(11 results)