2012 Fiscal Year Annual Research Report
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12J04800
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
于 佳佳 東京大学, 大学院法学政治学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 医療過誤 / 刑法上の対応 / 注意義務の基準 / 研修医 / 特別有能者 / ヒューマン・エラー / 医学的判断の誤り / 法人の刑事 |
Research Abstract |
研究成果 : 研究の核心的内容として「医療過誤の処罰とその制限」と題する博士論文を完成して、博士学位が授与され特別優秀博士論文賞が決定された。 具体的内容 : 本研究は、医療過誤の処罰範囲を明確にしてその適切な制限を図ることを目指し、日本の判例・学説を、ドイツの判例・学説を、イギリスの判例を、アメリカの判例を、それぞれ紹介・検討し、これらの検討に基づき、日本における医療過誤の処罰のあり方を検討したものである。 医療過誤の処罰範囲について、過失理論と刑事政策の両面から、裁判では注意義務の基準たる医療の一般水準が何を意味しているか、どのように判断されるかという問題を、医療の分野にどこまで刑事法が介入すべきであるかという問題をそれぞれ取り上げて、議論を展開して、比較法的研究を行った。 研究の意義および重要性 : 過失理論の問題に関する検討は、専門外の治療、研修医による治療、特別有能者による治療、医療資源の分配によって注意基準が客観的に類型化される程度がどこまで進んでいるかを明らかにした点で、これまでの研究を飛躍的に発展させた。 刑事政策の問題をめぐる議論の結論として、ヒューマン・エラーの処罰範囲を制限する条件を提出した。また、医学的判断の誤りに基づく医師の処罰を差し控える根拠を説明した。日本は、英米のように、医療過誤に基づく法人の刑事責任を問う方向へ立法を含め検討を進めることを提案した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
外国法の研究は、予定通り順調に進展している。日本法の研究については、平成24年12月、刑事医療過誤判例集で公表された新たな判例は、最近の5年間に医療過誤への法的対応の動向について大きな動きがあったという実態を示したので、その新動向について検討精査する必要が生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究の中核をなすのは、医療過誤に刑事司法がどこまで立ち入ることが適切であるかという問題である。この問題を解決した後、過失理論の問題として、医療領域の特色を考慮する上で、医療過誤事件の処理と自動車運転致死事件の処理の共通点と相違点をそれぞれ検討する必要がある。 また、刑事政策の問題として、医療過誤への対応手段として、処罰以外、損害賠償責任の追及、医師免許剥奪などの手段も考えられうるが、日本の医療事故に適用され得る規制手段の不完備の現状がよく指摘されており、ここで、ほかの規制手段の完備化は医療過誤の処罰範囲にどの程度で影響を与えるかをさらに検討する価値がある。 これからの研究は、上記の2つの問題の解決を目指し、議論を行う。
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Research Products
(1 results)