2014 Fiscal Year Annual Research Report
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12J04809
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
小草 泰 慶應義塾大学, 文学部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 知覚の哲学 / 痛み / 志向説 / 色 / 傾向性理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、主に前年度までに取り組んできた痛みの経験に関する研究を論文にまとめるとともに、色の主観的ないし経験依存的な性格を認めるタイプの色の傾向性理論に関する発表を行った。 まず痛みの問題に関しては、論文「痛みの経験は志向的か」を執筆した。これは、2015年中に刊行予定の論文集に収録されることとなっている。その内容は、痛みに関する志向説を批判することを通じて、志向説の強調する痛み(やその他の身体感覚)の経験が持つ志向的な性格――主体自身の身体状態「についての」ものであるという性格――を認めてもなお、何らかの主観的な感覚的要素がそれらの経験の現象学的性格に寄与することを認めるべきであることを論じたものである。この結論は、そこからの自然な展開として、知覚、感覚的経験一般について、主観的な感覚的要素を認めつつ、知覚(感覚)対象に対する直接的な気づきを確保するような知覚(感覚)理論の可能性を示唆する。 次に、(示唆されたその可能性の一つの具体化の試みとして、)物体の色をある種の感覚的要素を含む経験を引き起こす傾向性とみなすタイプの色の傾向性理論と、それに結びつきうる色知覚の理論について検討を行い、北日本哲学研究会におけるワークショップでその成果の一部を発表した。その内容は、傾向性理論は色知覚の現象学に合致しないという批判に応え、傾向性理論を擁護するとともに、傾向性理論と結びつく説得的な色知覚の理論の概要を示すというものであった。 これらの成果は、全体として、知覚および感覚的経験における主観的な感覚的要素の存在と、そしてそれらの要素の経験の志向的な性格に対する積極的な寄与を認める知覚理論の見込みを示している。そして、この結論は、現代における有望な知覚理論の概要を示すという本研究課題に一定の答えを与えるものである。
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Research Progress Status |
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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Research Products
(1 results)