2012 Fiscal Year Annual Research Report
近世日本の倫理思想からの〈作為〉観再考―労働・言語・芸術―
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12J04820
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
板東 洋介 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 儒教 / 荻生徂徠 / 朱子学 / 山崎闇斎 / 中江藤樹 / 『源氏物語』 |
Research Abstract |
研究初年度となる本年度の研究は、日本近世儒教の研究を中心に進められた。日本近世の儒教、とりわけその〈作為〉観を考察するうえで重要になるのは徂徠学と朱子学であるが、本年度はその双方について研究をすすめ、それぞれに成果を出すことができた。 まず徂徠学については、日本思想史学会大会(平成24年10月28日、於:愛媛大学)にて「徂徠学派の孔子像」と題して口頭発表し、来場した日本近世思想史研究者から高い評価を得ることができた。 また次に、朱子学の研究については、論文「おそれとつつしみ」が日本思想史学会の学会誌『日本思想史学』に、査読のうえ掲載された。この論文が機縁となって、日本・韓国・中国・台湾の儒教研究者が集まる科研費の研究会合(基盤研究(A)「東アジアにおける朝鮮儒教の位相に関する研究」研究代表者:井上厚史、平成25年1月25~27日)に招聘され、そこで日本朱子学における「敬」説の展開について報告を行なった。またさらにこの報告が機縁となり、朱熹の故郷であり、朱子学の本場である中華人民共和国福建省の厦門大学国学研究院から発刊される『朱子学年鑑』第一期に、日本朱子学の最新の研究動向の報告を執筆するよう依頼された。これは「近期日本朱子学研究綜述」と題して、中国人研究者の協力を得て中国語に翻訳され、すでに入稿済みである。総じて、本年度の日本朱子学研究は、日本の学界のみならずアジア儒教圏にまでその意義を示しうるだけの、実り多い成果を得たと自己評価できる。 また本研究の第二部門を形成する国学の言語論研究についても、国学の思想的源泉である『源氏物語』についての論文「『源氏物語』享受の論理と倫理」を『季刊日本思想史』80号に発表した。この論文は本誌の責任編集者から高い評価を受け、巻頭論文として掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
9.研究実績の概要にて報告した通り、とりわけ朱子学研究において、全国紙の査読論文一本、招待講演一回、さらに国際誌での研究総説一本という、多くの研究業績を年度内におさめることができたため。また、広範な読者を持つ全国誌『季刊日本思想史』への巻頭論文としての論文掲載も、本研究の意義を広く知らしめる意義をもったと自己評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に大きな変更はない。本年度の研究成果をふまえて、次年度以降近世儒教および国学の〈作為〉観をより包括的に解明してゆく予定である。 ただし、本年度の近世儒教研究を中心とする研究成果は、ひとつひとつの論文・発表と、本研究総体の目標である近世の〈作為〉観の解明とのつながりがやや明瞭でないという問題点を残した。次年度以降、本年度の研究を総合しつつ、近世儒教の〈作為〉観を主題とする論文を発表してゆく必要がある。これを今後の課題としたい。
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Research Products
(5 results)