2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J05039
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
平田 豊章 九州大学, 大学院工学府材料物性工学専攻, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 高分子ブレンド / 水界面 / 局所コンフォメーション / 分子鎖熱運動性 / 水構造 / 生体不活性 / タンパク質吸着特性 / 血小板粘着特性 |
Research Abstract |
高分子の生体不活性は、水界面における高分子の構造および物性と密接に関連している。従って、水界面における高分子の凝集状態および熱運動性を理解し、制御することは学術的に重要であることはもちろん、高分子最外層のナノ構造制御によるバイオ界面の構築につながることから、工業的にも重要である。これまでに、多分散ポリ(アクリル酸2一メトキシエチル)(PMEA)とポリメタクリル酸メチル(PMMA)をブレンドすることで、PMEAを表面偏析させた安定かつ平坦な膜を作製してきた。本研究では、生体不活性における高分子水界面の役割を理解するために、単分散PMEAを調製し、その水界面における凝集構造および熱運動性とその生体不活性の関係について検討した。 分子量が異なる3っの単分散PMEAを用いたブレンド膜に対して和周波発生分光測定に基づき水界面におけるPMEAの局所コンフォメーションおよび水構造を評価した。水界面におけるPMEAの局所コンフォメーションはPMEAの分子量に依存せず同じであったが、水構造はPMEAの低分子量化に伴い秩序性が低下した。この水構造の違いの原因を明らかにするために、側鎖の一部にクマリンを導入したPMEAを合成し、水界面におけるPMEAの熱運動性を蛍光偏光解消法に基づき評価した。その結果、低分子量PMEAほど高い熱運動性を有することが明らかになった。また、低分子量PMEAほど水中においてタンパク質吸着および血小板粘着に対してより高い抑制能を示したことにより、PMEAの熱運動性が水構造、さらには生体不活性に影響を与えていることを明らかにした。 得られた結果は、水界面における生体不活性高分子の構造、物性の理解および生体不活性との相関理解に繋がるため、意義がある。また、得られた知見は、生体不活性材料の高機能化、また新規材料の創製において重要な設計指針にもなり得るため、科学的にも工業的にも重要性が高いといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在、水界面において活性化したPMEAのダイナミクスが水の構造や生体適合性に重要な役割を持っていることを明らかにしており、研究自体は順調に進んでいる。残る課題として、活性化した分子運動の時空間スケールおよびPMEAと水分子の相互作用についての理解がある。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、水界面においてPMEAの分子鎖熱運動性が活性化し、それに伴い水構造の秩序性が低下することを明らかにしているが、どのような時空間スケールにおけるPMEAの分子運動が水界面において活性化しているかについての知見は不足している。これについては、水界面における分子運動を評価する手法として蛍光偏光解消法、PMEAの分子運動特性およびその含水による影響について動的粘弾測定および誘電緩和測定をそれぞれ用いることで水界面におけるPMEAの分子運動について詳細な理解が可能となる。また、カルポニル基などのPMEAの水素結合部位の和周波発生分光測定により、分子運動と水構造の関係について理解する。
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Research Products
(4 results)