2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J05072
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
村田 光司 名古屋大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ビザンツ / 史料論 / 古文書学 / 西洋史 / 文書形式学 / 皇帝文書 / 国制史 / 文書 |
Research Abstract |
昨年度までに得られた成果の一部を、まず「13世紀ビザンツ帝国における皇帝文書の形式・機能論的研究」と題して、5月に大阪大学で開催された「第18回ワークショップ西洋史・大阪」において報告した。ここでは従来「指令書」として一括りにされていた文書類型が、13世紀に入ってその扱う内容を増やすとともに形式上のバリエーションを生じさせ、また、それが当該時期における帝国文書局の構造の変化に対応したものであることを示した。本発表の中心は帝国の亡命期(1204-1261年)に発給された文書群であったが、今後はより時代をくだった文書の分析にとりかかる予定である。 8月上旬にギリシャのスパルティ市近郊、ミストラスの遺跡で行った調査では、遺跡管理に携わる職員の方々の協力によって、同地のヴロントヒオン修道院、オディギトリア聖堂の壁面に描かれた皇帝文書を実見する機会を得たが、それらの既存の翻刻に潜むいくつかの問題点を発見することができた。調査結果は平成26年度中にまとめ、発表する予定であるが、そこでこれら修道院に描かれた文書群の年代同定や既存のテクスト校訂に一定の修正を加え、それらが発給されたコンテクストを示すつもりである。この事例は、文書が受給者側によってどのように利用され得たかを探る格好の素材となる。 8月末からは、研究指導をフランス・パリ第4大学/コレージュドフランスのJean-Claude Cheynet教授に委託し、同地において研究を推進している。指導の過程で、私が研究対象とする文書の支持体や付属の封絨といった物質の重要性に気づき、これらについても調査する必要が生じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
史料の読解は一定程度進み、また関連する諸研究の消化についても、年度後半より留学先のパリ・ビザンツ世界研究所の蔵書に助けられ、スムーズに進めることが出来たが、成果の活字化には至らなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、引き続き史料の検討作業を進めつつ、得られた成果の論文化を急ぐ。一方で昨年度までに現れた新たな視点、すなわち文書を構成する諸物体が果たした役割についても調査し、これまでの成果と統合する必要がある。
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Research Products
(4 results)