2012 Fiscal Year Annual Research Report
計算化学的ミューテーションによる酵素の反応制御と設計
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12J05081
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
土井富 一城 九州大学, 先導物質化学研究所, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 酵素 / 密度汎関数法 / ミューテーション / QM/MM |
Research Abstract |
生体内の様々な化学反応は、多くの場合、活性中心に金属を含む酵素によって触媒されている。酵素は酸化還元反応、光合成など現代科学がターゲットにしている化学反応を温和な条件下で高選択的に行っている。また、酵素は高い基質特異性を持っているので、ミューテーションや金属の置換によって触媒する分子を制御する研究が盛んに行われている。しかし、酵素反応は非常に短命な中間体を含んでおり、反応経路の予測や活性中心近傍に存在する金属イオン、アミノ酸残基の機能の解析が難しいことも多く、酵素の改変を行うための知見は多くない。一方、理論計算はこの不安定な中間体の予測、金属イオンやアミノ酸残基の役割を予測する上で大きな力を発揮しており、人工酵素の作成を行う上でも理論計算による反応機構の解析は非常に有用であると考える。本研究では理論計算による変異酵素の反応制御と設計について研究を行い、効率的な変異酵素を予見する。研究対象はジオールデヒドラターゼによるグリセロール脱水反応である。この酵素反応は不活性化が起こりやすいことが知られている。我々はこれまで明らかになっていなかった不活性化に寄与する副反応を明らかにした。また、グリセロールはキラリティーを持たないが酵素に結合した構造は2つ存在し、一方のみが不活性化に寄与することが明らかになっている。この理由についても検討を行い、脱水反応の進行しやすさが不活性化に影響をあたえることも明らかにした。 これらの内容はすでに論文として報告している。また、実験により不活性化しにくい変異型が発見されていたが、変異型が不活性化しにくい理由が未解明であった。我々は変異型が不活性化しにくい原因についても理論計算を用いて検討を行い、不活性化を抑制する原因が基質の結合構造にあることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、野生型ジオールデヒドラターゼによるグリセロールの脱水反応の解析が終了し、その結果を論文にて報告している。また、変異型の反応についても解析が終了し、現在、論文としてまとめている最中である。変異型が不活性化しにくい理由についての知見が得られたので理論計算を用いた、さらに不活性化を抑制した酵素の提案を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、これまで得られた知見を基に不活性化を抑制した酵素の提案を行う。また、この方法を他の酵素に応用する予定である。
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Research Products
(7 results)