2012 Fiscal Year Annual Research Report
ニホンザルに血小板減少症を引き起こすサルレトロウイルスの病原性発現機構の解析
Project/Area Number |
12J05135
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉川 禄助 京都大学, ウイルス研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | レトロウイルス / 受容体 / ウイルス学 |
Research Abstract |
(1)サルレトロウイルス4型(SRV4)がニホンザルに血小板減少症を引き起こすか確認するために、感染実験を実施した。4頭のニホンザルに自然発症個体由来SRV4、2頭のニホンザルに感染性クローン由来SRV4を接種したところ、接種後一月で全ての個体が血小板減少症を発症した。また、SRV4の感染部位をPCRによって確認したところ、全身の臓器に感染していることがわかった。また、臓器よりRNAを抽出し、RT-PCRを行ったところ、SRV4は主に腸管系やリンパ節系の組織で複製していることがわかった。また、血液より分離した血漿や末梢血単核球(PBMC)及び骨髄よりSRV4の再分離に成功した。これらの結果によって、ニホンザル血小板減少症の原因ウイルスはSRV4であることが確定したため、ウイルス学及び獣医学的に非常に重要な成果である。 (2)過去の報告から、SRV4はヒトの細胞に感染する際に中性アミノ酸トラスポーターであるASCT2を受容体として利用していることがわかっている。そこで、ニホンザル及びカニクイザルのASCT2がSRV4の受容体になりうるか確認した。各動物種のASCT2を各PBMC由来のcDNAよりRT-PCRを用いてクローニングした。クローニングしたASCT2をSRV4非感受性細胞に発現させ、SRV4が感染しうるか確認したところ、ニホンザル及びカニクイザルのASCT2はどちらも受容体として機能することがわかった。受容体の同定はウイルス感染の制御などといった感染予防につながるため非常に重要な成果である。 (3)霊長類研究所とは異なる施設で、新たにニホンザル血小板減少症が発生した。しかし、これらの個体は全てSRV4陰性であった。そこで、メタゲノム解析を行ったところ、SRV4に近縁なウイルスであるサルレトロウイルス5型(SRV5)と強い相関がみられた。そこで、SRV5プロウイルスDNA陽性個体の血漿よりSRV5の分離に成功した。また、SRV5の全長配列の特定及び感染性クローンの作製に成功した。これらの結果は、新たな病原性ウイルスの発見であり、ウイルス学的に重要であり、また感染性クローンの作製は今後、SRV5の解析において非常に有用なツールになるため重要な成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通りに、SRV4をニホンザルに実験感染し、SRV4がニホンザル血小板減少症の原因ウイルスであることを証明し、SRV4のニホンザル及びカニクイザルでの受容体を同定した。これらに加え、新たにSRV5という新規のウイルスもニホンザル血小板減少症を引き起こす可能性を示唆し、さらには全長配列の特定及び、感染性クローンの作製に成功したため、当初の計画以上に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度においては、ニホンザルとカニクイザルでのSRV4の病原性を解析するために、各動物の抗レトロウイルス因子(BST2、APOBEC及びTrim5等)のSRV4に対する機能を詳細に解析する。また、SRV5をニホンザルに実験感染し、SRV5によって実際にニホンザル血小板減少症を引き起こすか確認する。
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Research Products
(7 results)
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[Journal Article] Comprehensive in vitro analysis of simian retrovirus type 4 susceptibility to antiretroviral agents2013
Author(s)
Tognmi, H., Shimura, K., Okamoio, M., Yoshikawa, R., MiyazHwa, T., Matsuoka M.
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Journal Title
Journal of Virology
Volume: 87
Pages: 4322-4329
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Sequence comparison of three infectious molecular clones of RD-114 virus2012
Author(s)
Shimode, S*., Yoshikawa, R*., Itoshino, S., Nakaya, Y., Sakaguchi, S., Kobayashi, T., Wiyazawa, T. (*equally contributed)
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Journal Title
Virus Genes
Volume: 45
Pages: 393-397
DOI
Peer Reviewed
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