2012 Fiscal Year Annual Research Report
炭素水素結合の直接変換を駆使したグラフェンナノリボンの精密合成
Project/Area Number |
12J05145
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
川澄 克光 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | C-H活性化 / ナノグラフェン |
Research Abstract |
sp^2混成炭素のシート構造からなるグラフェンは高い電子移動度、機械的強度、光透過性、磁気的性質をもち、物理学、材料科学といった学問のみに留まらず産業分野からも注目を集めており、間違いなく次世代マテリアルの主役となる物質である。グラフェンはサイズ、形、幅、エッジ構造、ヘテロ原子のドープや欠損の規則性等の構造要素により、その性質を左右されることが、理論科学的にも実験科学的にも明らかにされつつある。加えて、ナノメートルオーダーのグラフェン、すなわちナノグラフェンは、その性質はグラフェンの構造要素に特に大きく左右されるとされている。しかし、これらの要素を厳密に制御できる合成法はなく、この状況がグラフェンの分子科学的な研究展開を妨げているといっても過言ではない。本研究では、グラフェンナノリボン等のような様々なサイズや形状のナノグラフェンの精密かつ迅速な合成する方法論の確立である。 グラフェンは多環芳香族炭化水素(PAH)を二次元的に無限拡張したものと見なすことができる。すなわち、PAHをテンプレートとし、『ベンゼン』をつなぎ合わせることでグラフェンを化学的に合成できると考えられ、これを実現する理想的な触媒反応としてPAHのC-H結合直接アリール化する反応の開発に成功している。そこで、様々なPAHをテンプレートとし、これを直接アリール化することにより様々なナノグラフェンの短工程合成を試みた。中でも、ボウル型PAHであるコアヌレンをテンプレートとしたところ、warped grapheneという興味深い構造をもつナノグラフェンの合成に成功した。 現段階では、合成可能なナノグラフェンのサイズには制限があるが、上記の成果はナノグラフェンの精密自在合成に向けた大きな一歩と言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
コアヌレンをテンプレートとしたところ、warpedgrapheneという興味深い構造をもつナノグラフェンの合成に成功した。これは、フラーレン、カーボンナノチューブ、グラフェン等といった既存のナノカーボンのいずれにも分類することができず、ナノカーボンの新しい概念を開拓したと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
PAHの直接アリール化反応の開発によりナノグラフェンの精密自在合成に向けて大きく進歩したと言えるが、合成可能なナノグラフェンのサイズには制限がある。この直接アリール化反応は詳細な機構解明と共に、直接アリール化反応の効率の改善が今後の課題と言える。
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