2012 Fiscal Year Annual Research Report
ステンレス鋼におけるMnS介在物起点の孔食発生メカニズムの解明
Project/Area Number |
12J05158
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
千葉 亜耶 東北大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | MnS介在物 / ピット / ステンレス鋼 / 塩化物イオン(Cl^-) / アノード分極 |
Research Abstract |
(1)MnS介在物起点のピット発生挙動におよぼす塩化物イオン濃度の影響、 MnS介在物を含む微小領域(ca.350μm×150μm)において、0.1MNa_2SO_4、0.1MNaCl、3MNaClの3種類のCl^-濃度の溶液を用いて動電位アノード分極を行った(本研究で開発したシステムを使用)。Cl^-が存在する場合のみMnS/鋼境界部が溝状に溶解し、その境界部からピットが発生した(Cl^-が無い場合はMnSのみ溶解)。MnS/鋼境界部における溝状溶解が、ピット発生に先行する現象ということがわかった。 (2)MnS/鋼境界部の溝状溶解の解析 MnS介在物の半分を樹脂で被覆した状態で、定電位アノード分極を行い、その後樹脂を取り除いてSEM観察を行った(本研究で開発したシステムを使用)。Cl^-を含む溶液中ではMnS介在物も溶解したが、境界部のステンレス鋼が溶けて溝が形成された。Cr濃度が高いほど、より顕著な溝が形成された。境界部でのステンレス鋼の溶解はMnS溶解生成物とCl^-の相乗効果によって引き起こされることがわかった。 (3)MnS溶解生成物の特定 MnS介在物を含む微小領域において動電位アノード分極を行った後、溶液が存在する状態と水洗後でラマンスペクトルを測定した(顕微ラマン分光法)。分極後の溶液が存在する状態ではMnS/鋼境界部であるS系化学種が観察された。この化学種は境界部から約1μmの範囲に存在していた。Cl^-とともにステンレス鋼の溶解を引き起こす物質が特定された。 (4)あるS系化学種を含む3MNaCl溶液中でのステンレス鋼のアノード分極特性 あるS系化学種を入れた3MNaCl溶液中(pH35)で、ステンレス鋼の動電位アノード分極を行った。3MNaCl溶液中(pH3.5)ではステンレス鋼表面は不働態化するのに対して、この化学種を入れた3MNaCl溶液中(pH3.5)ではステンレス鋼は活性溶解した。あるS系化学種とCrの相乗効果によってステンレス鋼が活性溶解することが確認できた
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的はステンレス鋼におけるMnS介在物起点の孔食発生メカニズムの解明であり、採用1年度目はMnS溶解生成物などの環境側の影響について調査を行った。この結果、MnS解生成物のあるS系化学種(特定済み)と塩化物イオンの相乗効果によりステンレス鋼が活性溶解するため、MnS介在物を起点としてステンレス鋼にピットが発生することがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度はMnS/鋼境界部に比較的耐食性の低い第二層が存在するかなどの材料側の影響についても調査し、環境側・材料側の両方からピット発生メカニズムを検討し構築することを目標とする。
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Research Products
(6 results)