2012 Fiscal Year Annual Research Report
水素化分解反応を利用したバイオマス由来化合物からのジオール合成触媒の開発
Project/Area Number |
12J05187
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
天田 靖史 東北大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | バイオマス / エリスリトール / ブタンジオール / イリジウム / レニウム / 触媒 / TPR-XAFS |
Research Abstract |
本研究では,バイオマス原料のエリスリトールから高分子原料として用いられるブタンジオール生成のための触媒開発と反応機構の解明を目的とし実験を行った.現在,ブタンジオールは石油由来の物質から合成されるため,バイオマス由来化合物からの合成は石油枯渇や地球温暖化を抑制することが出来る.さらに,反応機構を解明することで様々なキシリトールやソルビトールなどのさらに炭素数の長い糖アルコールの水素化分解反応にも応用可能となるため重要である. 結果として,Ir-ReO_x/SiO_2触媒を用いエリスリトールから1,4-ブタンジオール収率25%,総ブタンジオール収率36%(世界最高収率)を達成した.また,これまで明らかにしてきた反応機構と様々な基質の適用性から,本反応ルートは内部のOH基が選択的に水素化分解された1,2,4-ブタントリオールを中間体としていることを明らかにした.さらに,Ir-ReO_x/SiO_2触媒の活性点構造を明らかにするため,昇温還元-X線吸収微細構造測定(TPR-XAFS),XRD,水素昇温還元測定,CO吸着,X線光電子分光法,ラマン分光などのキャラクタリゼーションを行い,触媒のモデル構造について検討した.その結果,三次元の低い価数を持つReO_xクラスタがcuboctahedron構造のIr金属と直接相互作用したモデル構造を提案した. これらの研究の成果は学位論文としてChemSusChemとJournal of Physical Chemistry Cに報告している.また,国内学会にも積極的に参加し,これらの研究内容について2回口頭発表を行っており,今年度は国際学会においてポスター発表する予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでエリスリトールから1,3-及び1,4-ブタンジオールを選択的に合成できる触媒は開発されていなかったが,Ir-ReO_x/SiO_2を用い世界最高収率でブタンジオールを合成することに成功した。さらに,様々なキャラクタリゼーションを行うことでIr-ReO_x/SiO_2の触媒構造を明らかにした.これらの成果を学術論文で2報提出できたため,研究は順調に進展していると考えます.
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Strategy for Future Research Activity |
エリスリトールから1,3-及び1,4-ブタンジオールを高収率で生成するための金属及び金属酸化物界面を持つ触媒の開発を行う.また,エリスリトールはOH基を4つ持つため選択的に特定の部位のOH基を除去することは難しいため新たな反応ルートについて検討する.具体的には,両末端のOH基同士を脱水させることでOH基の数を2つに減らし,残りのOH基1つまたは2つを除去した後,開環することでより高い1,3-及び1,4-ブタンジオールの生成が期待できる.開発した触媒の活性点構造をXRD,XPS,CO吸着量測定,XAFS測定等を用いて観察し,触媒構造が活性や選択性に与える影響について明らかにする.さらに,調製した触媒の再利用性について検討し,実用化できるようにしたい.
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