2012 Fiscal Year Annual Research Report
膜を超えた情報伝達:細胞表層ストレス応答システムに対する新視点からのアプローチ
Project/Area Number |
12J05188
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
檜作 洋平 京都大学, ウイルス研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 表層ストレス応答 / 大腸菌 / 膜内切断プロテアーゼ / PDZドメイン |
Research Abstract |
本研究計画では、大腸菌における表層ストレス応答の主要な経路である♂経路ストレス応答を中心として、【1】新たなσ^E活性化経路の探索、【2】新視点によるストレス応答システムの高次・マクロ的鯉析という二つの観点から細胞表層ストレス応答システムを理解することを目的とした。本年度は主に【1】において研究上の進展があった。 (1)RsePPDZドメインの生理的役割の解析:σ^E経路ストレス応答では、異常外膜タンパク質(OMP)の蓄積を感知し、2つの膜プロテアーゼDegSとRsePが膜貫通型anti-σ^Eタンパク質RseAを連続的に切断することで、ストレス応答転写因子σ^Eを活性化させる。RseAの二段階切断制御機構として、Liら(Li et al., 2009)はDegSによる切断で生じたRseAの新生C末端残基Val148を、RsePのPDZドメインが認識・結合することでRsePによる二段階目の切断が促進されると提唱した。そこで私がLiらのモデルを検証した所、in vivoでは、1)RseP PDZドメイン上の点変異、2)2つのPDZドメインの全欠失、3)RseA Val148残基のアミノ酸置換のいずれも基質切断能への影響はほとんど見られなかった。これらの結果は、PDZドメインによるRseAのC末端残基の認識は、RsePによる切断に主要な役割を果たしていないことを示唆する。さらに染色体rseP遺伝子上の2つのPDZドメイン領域欠失株を作製し、それぞれOMPによるσ^Eの活性化能を調べたが、野生株と比べほとんど差は見られなかった。このことは、PDZドメインが従来型のOMP依存的なσEストレス応答経路の制御には重要ではない事を示唆し、DegS非依存的な第二のσ^E活性化経路が存在する可能性を示唆している。本研究内容については国際学術雑誌Molecular Microbiologyにおいて発表した。 (2)好熱菌AquifexRsePホモログのPDZ-NCタンデムの結晶構造鯉析:横浜市立大学の禾晃和准教授との共同研究により、好熱菌AguifexaeolicusのRsePホモログ(AaRseP)のPDZ-N,Cドメイン(PDZタンデム)の結晶構造解析を試みた。その結果、2つのPDZドメインがそれぞれの推定リガンド結合領域を向かい合わせて一つのポケットを構成する特殊な配向をとることなどのいくつかの知見を得た。また、大腸菌RsePのPDZタンデム欠失体ではRseA切断における二段階切断制御が損なわれる事を見出した。以上の知見から、PDZタンデムが、膜表面においてゲート様の構造を形成し、DegSによって切断されたRseAのペリプラズム領域のサイズを感知して基質を選別するような、サイズ排除フィルターとして機能するというモデルを提唱した。本研究内容については学術雑誌に投稿準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記研究実績の項で掲げた2つの研究項目のうち、本年度は主として【1】の課題に取り組んだが、そちらは順調に推移している。成果としては学術論文一報を発表し、さらにもう一報を投稿に向け実験データを取りまとめている段階であり、当初の予定に対し充分な進展を見せたと考えている。もう一方の【2】の課題については本年度は目立った進展は得られていないが、交付申請書記載の研究計画書の予定では二年目から本格的に取り組む計画となっており、一年目となる本年度の時点での進展としては全く問題ない。
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Strategy for Future Research Activity |
上記研究実績の項で掲げた【1】の課題についてはここまで順調に推移しているので、このまま計画書通りに進行する。具体的には(2)のRseP PDZタンデムの結晶構造解析についての論文の学術雑誌掲載を一つの目標とする。また、研究計画通り【2】の課題の進展を本年度の主たる研究目標とする。具体的には表層ストレス応答関連因子の蛍光顕微鏡観察系の確立と、それを用いた関連因子群の細胞内イメージング解析を推進する。
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Research Products
(5 results)