2012 Fiscal Year Annual Research Report
唐前半期におけるテュルク人の動向とその意義--唐の遊牧国家的本質をめぐって--
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12J05231
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
西田 祐子 大阪大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 唐代 / テュルク人 / テュルク系遊牧民 / 遊牧国家 |
Research Abstract |
本年度前半は、当初の研究計画どおり、唐前半期のテユルク人、とりわけ契必氏とその部衆に関する典籍史料の「基礎的分析」を進め、先行研究の整理を行った。さらに、「基礎的分析」と並んで本研究課題のもうひとつの柱である契必氏の墓誌史料の訳注作業に着手した。当該史料については既に多くの拓本・録文等が公刊されているも、拓本は細部まで判読し難くまた録文も誤読が散見される。また、近年中国では唐代石刻史料が陸続と発見・公開されており、その中には唐代テユルク人に関するものが少なからず含まれている。そこで、夏季に中国・陜西省にある当該墓誌を実見調査し、従来の読みや解釈をさらに推し進めることができた。 本年度後半では、かかる基礎作業を基に、契必何力など唐代前半期のテユルク人の人数や規模、唐朝創建期の動向、さらにこれらの特徴が高宗~則天武后期にどのように展開したかを分析した。以上は、遊牧国家たる唐帝国をユーラシア史に位置づけるという本研究課題の最終目標を達成する上での礎石となる。 また、契必氏墓誌調査と並行して、陜西・甘粛各地においてテユルク人関係史料の調査や景観調査を行った。この成果に基づき、河西地方において活動していたテユルク人の記録を再検討した結果、これまで研究の基盤とされてきた『新唐書』の記事内容が信憑性に乏しいことを改めて指摘するとともに、従来等閑視されてきた契必氏の重要性を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、唐前半期のテユルク人(特に契1氏とその部衆)に関する典籍史料の「基礎的分析」及び、契〓氏の墓誌史料の訳注作業を進め、それをもとに、契〓何力など唐代前半期のテユルク人の人数や規模、唐朝創建期の動向、さらにこれらの特徴が高宗~則天武后期にどのように展開したかを分析した。以上の作業は申請書に記した1年目の年次計画どおりに順調に進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)契〓何力一族とその部衆が唐末期まで存続したことについて、政治的・軍事的状況及び唐自身の皇帝交代に沿った政策の移行の状況から検討する。 (2)唐代テユルク人の活動からは、唐帝国の国家構造及び人材登用システムには遊牧国家に伝統的・習慣的な要素が存することが看取され、それは先行する拓跋国家や後代のモンゴル帝国・清朝にも通底する予想される。そこで、かかる唐代におけるテユルク人の活動と、北魏・元(大元ウルス)・清(ダイチン=グルン)などの諸王朝の侍従的集団とを比較考察し、唐の遊牧国家的特質を抽出・分析する。
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Research Products
(1 results)