2012 Fiscal Year Annual Research Report
電離圏からのイオン流出過程と地球起源イオンのリングカレントへの寄与に関する研究
Project/Area Number |
12J05283
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
北村 成寿 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | イオン流出 / 極域電離圏 / 地球磁気圏 / 磁気嵐 / FAST衛星 |
Research Abstract |
極域電離圏は、そこから伸びる磁力線が地球磁気圏の外側や惑星間空間に接続しており、磁力線に沿ってプラズマが流出していく。本年度は、最もエネルギーが低く、直接計測が困難なイオン流出会過程であるpolar windのメカニズムについて、光電子の寄与とイオンの流出フラックスを明らかにする事を目的として、FAST衛星の電子の観測データの解析を行った。磁力線に沿って流出する光電子と、磁力線に沿って降下してくる電子のエネルギースペクトルの比較を行い、極冠域の電離圏から流出する光電子が高高度の磁気圏において反射される頻度、反射される上限のエネルギー、反射されずに流出していく光電子のフラックスについて解析を行った。その結果、太陽活動極大期の地磁気静穏時には衛星より高高度において磁力線に沿って20V程度の電位差が存在し、低エネルギーの光電子を電離圏に向けて反射しているのに対して、大磁気嵐の主相時には5V程度もしくはそれ以下にまで縮小し、反射される光電子が大幅に減少することを明らかにした。この結果は、磁気嵐時には極冠内を通過して流出しているイオンの量が大幅に増加している事を示している。また、地磁気活動が静穏な期間については太陽活動が活発な時ほど沿磁力線方向の電位差が大きくなる傾向があり、光電子の生成量は増えるものの大部分がその電位差によって反射され、流出できるフラックスはほぼ一定に保たれるという結果が得られた。沿磁力線電流が弱い場合、電子のフラックスとpolar windのイオンのフラックスが釣り合っていることが推定される。このため、この解析結果は太陽活動の変動によって光電子の生成量が変化してもpolar windイオンの流出フラックスがほとんど変動せず、イオンを加速する方向の沿磁力線電位差の形成とその変動にのみ寄与するということを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
光電子の反射の太陽活動依存性の解析がほぼ終了したところでFAST衛星の粒子データの較正に関するパラメータ及び元になるデータのファイル形式が変更されたため、新たな形式のデータを使用できるように解析ソフトウェアの大幅な書き換えが必要になり、さらに解析全体のやり直しの必要が出たため。
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Strategy for Future Research Activity |
FAST衛星の粒子データの形式の変更は、短期的には解析用のプログラムの大幅な書き換えを必要とし、作業に遅れを出してしまったが、プログラムが完成すれば、以前より高速でのデータ処理が可能となる。これらの新しいプログラムは、現在進めている光電子の解析だけでなく、元々次年度に計画されていたオーロラ帯やカスプにおけるイオン流出のエネルギー、フラックスの時空間変動についての統計解析に関しても使用でき、処理の高速化が期待できる。まずは新しいプログラムを用いて、極冠域の光電子の流出フラックスと高高度に存在するボテンシャルドロップについて、太陽活動、地磁気活動依存性を考慮した総合的な描像をしめし、投稿論文にまとめる。さらに、プログラムの一部を書き換えることにより、カスプやオーロラ帯におけるイオンの流出量やエネルギーとエネルギーインプットの関係についての解析を進める。
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Research Products
(7 results)