2013 Fiscal Year Annual Research Report
電離圏からのイオン流出過程と地球起源イオンのリングカレントへの寄与に関する研究
Project/Area Number |
12J05283
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
北村 成寿 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 日本学術振興会特別研究員(PD)
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Keywords | イオン流出 / 極域電離圏 / 光電子 / FAST衛星 / イオン組成 |
Research Abstract |
極域電離圏からのイオン流出において最もエネルギーが低く直接計測が困難な過程であるpolar windの理解の為に、FAST衛星によって極冠領域の高度3000-3900kmにおいて取得された電子の計測データの大規模な統計解析(1996-2009年)を進めた。その結果、polar windが支配的と考えられる地磁気活動静穏時では電離圏から流出する光電子が沿磁力線方向の電位差の形成に大きく寄与し、太陽活動が活発になることによって増加する光電子によって、沿磁力線方向の電位差が大きくなる事を明らかにした。一方、電位差の発達によって光電子の反射も増加するため、光電子の流出フラックスは増加しない事も明らかにした。電荷の準中性を維持するためには光電子の流出はpolar windのイオンの流出フラックスと釣り合っていなければならないため、この結果はpolar windのイオンのフラックスが別の過程によって決定されていることを示唆している。電荷交換によって生成される水素イオンのフラックスに上限がある事がモデル計算で指摘されており、今回得られた電子の流出フラックスがその上限フラックスと同程度であり、イオンフラックスの決定過程として有力である。さらに、polarwindではより重い酸素イオンまでは引き出せないことが示唆された。 オーロラ等に関連した酸素イオン流出の描像を明らかにするために、FAST衛星の電磁場と電子・イオン・イオン組成のデータの一部を解析し、電離圏へのエネルギーインプット(降り込み電子の密度、ポインティングフラックス等)と酸素・水素イオンの流出フラックスの経験的な関係式を得た。その結果、酸素イオンの流出フラックスと降り込み電子の密度の関係式に関しては、太陽天頂角依存性が新たに認められ、磁力線の根元の電離圏の状態がエネルギーインプットと同様に重要であるという初期結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
FAST衛星のイオン組成のデータの取り扱いに予想以上の時間を要してしまったため。また、太陽活動が極大に達し Van Allen Probes衛星の磁気嵐時の観測データの解析を予定していたが、極大の活動度がここ100年で最低となってしまい、大きな磁気嵐がほとんど発生せず、期待していた酸素イオンの増加がやや不明瞭であるため。
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Strategy for Future Research Activity |
EAST衛星のデータ解析に関しては遅れが出てしまったものの、最も時間のかかるデータ処理に関してはほぼ終了しており、急ぎ解析を進めていく予定である。一方、Van Allen Probes衛星のデータに関しては、衛星の遠地点が磁気嵐時のリングカレントを観測するのに適した領域にいた期間にほとんど磁気嵐が起こらず、期間が終了したため追加のデータ取得は期待できない。現状のデータでとこまで明らかにできるか検討を進め、解析を進める事が難しいとなった場合には、FAST衛星のデータ解析に注力し、太陽活動度があまり高くない条件での磁気嵐時のイオン流出の描像にっいての解析を行う。
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Research Products
(10 results)