2012 Fiscal Year Annual Research Report
二酸化炭素とアルコールからの有機カーボネート合成触媒とプロセスの開発
Project/Area Number |
12J05289
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
本田 正義 東北大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 二酸化炭素 / 炭酸ジメチル / 酸化セリウム触媒 / 常圧固定床反応装置 / ニトリル水和反応 |
Research Abstract |
研究の目的は、酸化セリウムを触媒としたメタノールと二酸化炭素からの炭酸ジメチル(DMC)直接合成反応を、バッチ系の反応からフロー系の反応へ移行し、かつ90%以上の高いDMC収率を得ることである。本年度の研究内容は、(1)酸化セリウムをベースとする触媒の開発、(2)脱水剤のニトリルの検討の2点を行った。これまで本反応には、触媒の酸・塩基機能が必要であることが知られていることから、酸化セリウムを修飾することで酸・塩基性を変え、触媒活性の向上を図った。具体的にはホウ素、リン、硫黄、アルミニウム等の典型元素、20種類程度の遷移金属元素を添加した。その結果リン、硫黄、鉄、銅、亜鉛、イリジウムを含浸した触媒ではDMC生成速度が若干向上したものの、著しい活性の向上にはつながらなかった。 これは酸化セリウムに金属を担持することで、酸化セリウム本来が持つ酸・塩基活性点を逆に潰してしまったと考えられる。以上より、高活性な新規触媒の開発には至らなかった。次に脱水剤のニトリルの選択を行った。33種類のニトリルを少量添加して反応を行った結果、ピラジン-2-カルボニトリル、2-シアノピリミジン、2-シアノピリジンといったNヘテロ原子を含む6員環の2位にシアノ基が結合したニトリルで顕著な効果が見られ、DMC生成速度が60-130倍向上することが明らかになった。また、2-シアノピリジンを量論量添加することで、バッチ系反応ではDMC収率が94%に達することを見出した。これまでは過剰の脱水剤を加えた条件でも最大47%と報告されており、非常に高い収率であることがわかる。以上の結果を受けて、本反応をフロー装置を用いて行った。その結果目的生成物のDMCが生成していることをガスクロマトグラフの分析で確認することができた。これは他の触媒やニトリルを組み合わせても達成されることはなく、酸化セリウムと2-シアノピリジンを組み合わせることによってのみ達成され、CO_2低圧条件でDMCが生成するという世界で初めての結果を見出した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題を達成するために、(1)触媒の改良、(2)ニトリルの選択、(3)反応条件の最適化を挙げていたが、平成24年度には(1)、(2)の手法を行い、フロー系でDMCを生成することに成功した。二酸化炭素の常圧フロー系でDMCが生成した結果は世界でも報告例がなく、研究が順調に進行したと言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は目的生成物である炭酸ジメチル(DMC)の収率向上を図るが、CO_2低圧条件ではメタノールと脱水剤の2-シアノピリジンが反応することにより、イミデートが大量に副生してしまうという問題がある。 またイミデートは強い塩基であり、酸化セリウムを被毒することも明らかになった。そこで当初に予定していた反応条件の最適化に加え、イミデートが生成しにくい反応条件の探索、さらにはイミデートが生成しない脱水剤の開発やイミデート被毒しない触媒の開発を行う。また常圧固定床以外の反応装置の検討(高圧フロー系、セミバッチ系)も行う。
|
Research Products
(2 results)