2013 Fiscal Year Annual Research Report
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12J05328
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
杉浦 祥 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 統計力学 / 量子純粋状態 |
Outline of Annual Research Achievements |
統計力学における予言は従来アンサンブル平均と呼ばれる、実現しえる状態全ての平均によって求められてきた。対照的に、たった一つの典型的な量子純粋状態によって全ての予言が可能な定式化を、申請者らは完成させた。 具体的には、着目系が熱浴に接した「カノニカルアンサンブル」と呼ばれる平衡状態に対応した量子純粋状態を構成し、そこから自由エネルギーなどの熱力学関数やエネルギーといった、統計力学で興味ある全ての物理量の熱平衡値を得られる事を示した。熱力学関数は、実現し得る状態の数と密接に関係しているため、たった一つの状態からこれが得られる事が大きな驚きであった。 さらに、申請者はこの新たな定式化を数値計算に応用し、カゴメ格子系と呼ばれる数値計算の困難な系について、従来厳密な計算行われていた系の倍近い大きさの計を計算した。その結果、従来、比熱は低温で二つのピーク構造を持つと思われていたが、片方のピークは系を大きくするにつれて消えていくという、比熱の振る舞いについて新たな結果を得た。 また、この定式化は、熱浴以外にも粒子浴に接した「グランドカノニカルアンサンブル」や、ヒルベルト空間が無限でエネルギーに上限がない場合にも拡張できる事を示した。 この拡張についても数値計算に応用し、厳密な解が知られた系において正しい結果を与える事を示した。そしてさらには、従来計算が困難であった三角格子ハバード系へ適用し、新たな結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
並列化を含む数値計算を実行した結果、カゴメ格子系のふるまいについて新たな知見を得て、関連する論文はPhysical Review Letter誌のEditors' Suggestionとして出版された。
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Strategy for Future Research Activity |
ドイツ、およびアメリカの研究者と共同研究により、統計力学のより幅広い問題へと応用する。 具体的には不純物がランダムに入った物質内の性質を明らかにする事と、電流や熱流といった動的な現象へ定式化の拡張を行う。
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Research Products
(2 results)