2012 Fiscal Year Annual Research Report
19世紀デンマーク文学におけるユラン地方表象の変容
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12J05340
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
奥山 裕介 大阪大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 北欧 / デンマーク文学 / オリエンタリズム / 他者表象 |
Research Abstract |
19世紀におけるスカンティナヴィア諸語圏とドイツ語圏の文化的対立に着目し、デンマークと大陸ヨーロッパの中間領域であるユラン半島地方の文学的表象と同時代の民族アイデンティティをめぐる諸言説の関係を検討すべく、研究を実施した。第一に、コペンハーゲンの都市文化とユラン半島の地方・境域文化によって代表されるデンマークの地理的イメージと歴史的記憶の格差を明らかにするため、19世紀の首都を舞台としたヘアマン・バングの創作テクスト『化粧漆喰』における都市のスペクタクル的表象とシュレースヴィヒ戦争での国土喪失経験の記憶の関係を分析し、日本比較文化学会にて口頭発表を実施した。またその成果を元に、『比較文化研究』第103号に論文を投稿し、げんざい審査中である。また、19世紀のナショナリズム隆盛期におけるコペンハーゲン都市文化とユラン半島の地誌的研究の実態を調査すべく、2013年1月23日から2013年3月1日まで、デンマーク王立図書館にて文献調査を行った。その結果、パリ由来のオリエンタリズムの輸入にみられる他者表象を媒介とした自文化理解の例証を、19世紀のコペンハーゲンに開設された遊興施設ティヴォリの空間デザインに関する新聞記事などの一次史料を大量に入手した。また、ユラン出身の都市民によって形成されたヘルンフート同法教団や仲介商人の活動実態に関する史料や研究文献を取得した。これら史料の蓄積・整理により、次年度に向けての成果拡大の基礎を確実なものとした。平成24年度末に査読を通過し、平成25年度4月7日に実施された第211回阪神ドイツ文学会での口頭発表「セーアン・キェルケゴールのユラン半島旅行と周縁ヨーロッパ都市における遊歩者像の形成」は、以上の調査活動に基づいて結実した成果実績であることを付記しておく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画の遂行に必要な史料の蓄積と解析により、平成25年度の研究活動を円滑化させる基礎的な条件を整備した。結果、平成24年度末の時点において、第211回阪神ドイツ文学会研究発表会、第35回日本比較文化学会全国大会、第14回キェルケゴール協会学術大会の口頭発表の許諾審査を通過し、『独文学報』(大阪大学ドイツ文学会)第29号に査読つき論文を投稿するなど、着実に成果を公にすべく研究成果の報告活動を強化している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に蓄積したデンマークの都市および地方の文化動態に関する文献史料と先行研究に依拠しながら、研究計画の遂行と内容の充実化を推進する。具体的な発表媒体と成果内容は以下の通りである。『比較文化研究』第103号にヘアマン・バングのテクストにみられるティヴォリ遊園と周辺の都市空間の文学的表象に関する査読つき論文を発表予定。『独文学報』第29号にキェルケゴールのユラン半島旅行と都市遊歩者像の形成の関係を考察した査読つき論文を発表予定。『世界文学』(世界文学会)第118号に、ヴィルヘルム・トプスーの文学テクストにみられるユラン半島の国民植民地的イメージを同時代言説との関係から分析した査読つき論文を発表予定。Danske Studser2013に、ユラン地方イメージの歴史的変遷に関する査読つき論文を発表予定。『ドイツ文学論孜』(阪神ドイツ文学会)第55号に、シュレースヴィヒ戦争の記憶に関する世代間格差に関する査読つき論文を発表予定。
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Research Products
(1 results)