2012 Fiscal Year Annual Research Report
遍歴フラストレーション系における多軌道効果に起因する新奇物性の探索と解明
Project/Area Number |
12J05373
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
武田 晃 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | NMR / 強磁性 / 金属絶縁体転移 / 巨大磁気抵抗効果 / 重い電子 / 高圧 |
Research Abstract |
平成24年度、報告者は、以下にあげる二つの課題に取り組み、研究成果を、13に記述された通り、学会、論文発表という形でまとめた。 1.高価数Cr酸化物の核磁気共鳴(NMR)法による研究 高価数のクロムイオンを含む酸化物は、クロムと酸素の強い軌道混成のために、強磁性や金属絶縁体転移といった特徴的な物性現象が現れる。本年度、報告者は、高価数のクロムを含むCrO_2の単結晶薄膜、および、新たに合成された酸化物NaCr_2O_4のNMR法による物性研究を展開し、高価数クロム酸化物における新奇物性の探索と、普遍的な知見の獲得を目指した。研究の結果、これらの酸化物のクロムの3d電子の間には、多軌道効果によって、強磁性的な相互作用と反強磁性的な相互作用が同時に働くことを明らかにした。さらに、NaCr_2O_4は、傾角反強磁性が実現し、傾いたスピンが作る強磁性成分を打ち消すように、磁区構造を形成することが明らかになった。この磁区構造は磁場印加によって消失し、反強磁性体としては珍しい巨大な磁気抵抗効果を引き起こす。この結果は、高価数をとるCr酸化物が、幾何学的に特徴のある格子系を舞台に、興味深い物性を発現する可能性があることを示唆しており、今後、更なる物質開発の進展が期待される。 2.LiV_2O_4の圧力実験 LiV_2O_4に見られる重い電子的な挙動の起源を解明することを目指して、この物質の物性の圧力効果を調べた。 従来の到達圧力(~5GPa)をはるかに上回る9GPaまでの圧力印加に成功し、高圧下で^7Li核のMR実験を行なった。実験の結果、LiV_2O_4は、1.5GPaを境に、重い電子的な振る舞いを示さなくなることや、圧力の増加に伴い、強磁性的なスピン揺らぎが、反強磁性的なスピン揺らぎに打ち勝っていくことが明らかになった。これらの圧力効果は、常圧下における重い電子的振る舞いの起源に迫るうえで、重要な手がかりを与えることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
物質開発の進展、圧力下物性測定技術の向上により、本研究を進めるうえで重要な知見の獲得が期待できる研究対象の拡大や、圧力実験の成功確率の向上、簡単化が進み、研究が予想以上に進展した。
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Strategy for Future Research Activity |
報告者は、LiV_2O_4の圧力実験を中心に、今後の研究展開を計画している。まずは、到達圧力を、さらに上げることを目指し、装置改良に取り組む。次に、非磁性サイト^7Li核だけではなく、磁性サイト^<51>V核のNMR測定を行ない、LiV_2O_4の局所電子状態の圧力効果の解明を目指す。 また、圧力効果が期待される新物質が見つかり次第、新物質の物性研究を開始する予定である。
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Research Products
(5 results)