2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J05453
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
白川 一 京都大学, 生命科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | シロイヌナズナ / ゼニゴケ / MDF1 / ミロシン細胞 |
Research Abstract |
シロイヌナズナのミロシン細胞分化を制御する因子AtMDFI(Arabidopsis thaliana Myrosin Cell Differentiation Factor 1)とそのゼニゴケ相同遺伝子MpMDF1(Marchantia polymorpha MDF1)に着目して研究を遂行した。ミロシン細胞レポーター遺伝子MYR001:GUSをatmdf1変異体に導入し、atmdf1変異体ではミロシン細胞が形成されていないことを明らかにした。加えて、AtMDF1の直接の下流標的遺伝子TOMs(Targets of AtMDF1)に着目した。TOM1のT-DNA挿入遺伝子破壊株は顕著な表現型を示さなかったが、amiRNAでTOMlとTOMIホモログ(TOMI-Like)の遺伝子発現抑制株を作製したところ、ミロシン細胞の分化が2割程度まで減少していた。以上の結果から、TOM1とTOM1-Likeが冗長的にミロシン細胞分化に関与している可能性が示唆された。MpMDFIの機能を解析するために、ゼニゴケの切断面を用いた形質転換系により、MpMDF1pro::MpMDF1-SRDX, 35Spro:MpMDF1-SRDX, MpMDF1pro::sGFP-MpMDFI形質転換体を取得した。また、mpmdf1 knock-out株作製用のDNAコンストラクトを作製した。ミロシン細胞レポーター株MYR001:GUSに35S::MpMDFIを導入したところ、35S::AtMDF1で見られる過剰で異所的なミロシン細胞の発達は観察されなかった。このことから、MDF1は進化の過程でミロシン細胞誘導能を獲得したと考えられた。実験技術の習得、及び情報交換を目的に、オーストラリア・モナシュ大学のJohn Bowman博士の研究室を訪問した。研究成果の一部を、学会誌への発表・学会発表としてまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シロイヌナズナのミロシン細胞分化の解析においては、すでに単離している転写因子MDF1に加えて、新規の候補因子TOM1・TOMI-Likeの単離に成功した。また、ゼニゴケのMDF1ホモログの解析に必要なゼニゴケ形質転換体の作出にも成功している。加えて、ゼニゴケの遺伝子をシロイヌナズナに導入することにより、MDFIの進化的位置づけを明らかにできる結果も得ることができた。以上の結果は、研究の目的と照らし合わせて考えると「(2)おおむね順調に進展している」に該当すると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
シロイヌナズナにおける解析は、MDF1・TOM・TOM1-Likeを中心に進める。遺伝学的な手法に加え、生化学的手法・蛍光イメージング・トランスクリプトーム解析を行う。解析に必要なシロイヌナズナ形質転換体は、ほぼすべてそろっている。ゼニゴケにおけるMDF1の解析は今年度までに作製したゼニゴケ形質転換体を用いて、変異体の表現型・発現部位の解析を行っていく。手法としては、組織をエポン樹脂・テクノビット樹脂などの包埋剤に埋め、切片を作製した後、光学顕微鏡・及び電子顕微鏡を用いて観察する。最後に、シロイヌナズナmdf1変異体背景にAtAfDF1pro::MpMDF1を形質導入し、ミロシン細胞分化の表現型が相補されるか検証する。
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