2012 Fiscal Year Annual Research Report
TRPCチャネルタンパク複合体形成の生理的意義の解明
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12J05497
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
北島 直幸 九州大学, 大学院・薬学研究院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | チャネル / アミノ酸 / グルコース |
Research Abstract |
TRPCチャネル群が複合体を形成する意義をシグナル伝達の観点から明らかにすることで,心臓におけるTRPCチャネルの生理的役割を確立する」ことを目的とし,平成24年度は以下の実験を行った. (1)アミノ酸に対するTRPCチャネル活性化の特異性・選択性の決定 ラット新生児心筋細胞および心線維芽細胞に対し,全アミノ酸の混合液刺激を行ったところ,pH6.4以下の溶液中においてTRPC3/6依存的なCa^<2+>応答が観察された.また,TRPC3およびTRPC6欠損マウスの心臓ではアミノ酸シグナルのひとつであるオートファジーが亢進していることが明らかとなった. (2)TRPC3およびTRPC6欠損マウスを用いたマイクロアレイ解析およびメタボローム解析 TRPC3およびTRPC6欠損マウスの心臓および腎臓を用いて,マイクロアレイ解析を行った.すると,2型糖尿病に関与する遺伝子の心臓における発現レベルがTRPC6欠損マウスにおいて増加し,TRPC3欠損マウスにおいて低下していることが明らかとなった.また,それぞれの欠損マウスの血液・尿サンプルを用いてメタボローム解析を行った.血中ではTRPC3欠損およびTRPC6欠損マウスにおいてトリグリセロール,グルコース量,アンジオテンシン量がWTに比べて低下していた.尿では,TRPC3欠損およびTRPC6欠損マウスにおいて尿中-N-アセチル-β-D-グルコサミニダーゼ量が有意に低下していた. (3)糖尿病性心筋症に対するTRPC3/6の関与 ラット新生児心筋細胞に対して高濃度グルコース刺激を行ったところ,高濃度グルコース刺激によるAktの継続的な活性化がTRPCの阻害剤により抑制された.このことより,TRPCがグルコース代謝に影響を与えていることが示唆された.そこで,ストレプトゾトシンを用いて高血糖モデルを作成したところ,TRPC6欠損マウスにおいて糖尿病性心筋症による有意な心機能低下および,TRPC3欠損マウスにおいて心機能低下の抑制が観察された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は特に実験モデル構築および基礎データ取得(時間経過や濃度依存性の確認),スクリーニングによる新たな知見の創出に専念した.その結果,アミノ酸シグナルにおけるTRPCチャネルの重要性については,遺伝子欠損マウスを用いて新たな生理現象を見出し,また,グルコース代謝機構における重要性の予備的データも得ているため.
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Strategy for Future Research Activity |
TRPCチャネルの生理的な役割については予備的であるが新たな現象を見出しつつある.しかし,TRPCチャネルを甲心とした複合体形成がその生理作用に及ぼすの役割については今後さらなる検討が必要である.また,当初予想していたアミノ酸感受性については,個々のアミノ酸に対する応答性についての知見はまだ得ていないものの,グルコース代謝機構という新たな側面も見えてきた.両方ともに栄養シグナルとして大変重要であることから,栄養感知・応答性の観点から,TRPCチャネルの重要性について調べていく.
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Research Products
(14 results)