2012 Fiscal Year Annual Research Report
機能性環状ペプチドを基礎とした協奏的生物活性制御システムの構築
Project/Area Number |
12J05533
|
Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
菅 虎雄 佐賀大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | イオンチャネル / イオン輸送 / 環状ペプチド / ナノチューブ |
Research Abstract |
研究課題である「機能性環状ペプチドを基礎とした協奏的生物活性制御システムの構築」に関して同生物活性制御システムの各要素の確立を試みた。 脂質膜における安定的なボア形成並びに大型化に関しては電気的中性なcyclo(L-Gln)_5に1-100μFM程度の尿素を同環状ペプチドと混合させることで、より長寿命で数十倍高いイオン透過電流が観察された。これは、尿素という比較的単純な化学構造をもつ添加剤によって安定的なボア形成並びにボアの大型化が促進されたといえる。また、正電荷をもつcyclo(L-Lys)_5と負電荷をもつcyclo(L-Glu)_5をモル比1:1の割合で混合して調製した混合物サンプルにおいてチャネル形成能評価を行ったところ、数十倍高いイオン透過電流が観察された。これは正と負の電荷をもつ環状テトラペプチドを混合させることで高いイオン透過電流、すなわちボアサイズの大型化を煩雑な化学修飾を必要としないで実現できたと評価できる。 脂質膜におけるイオン選択性をもつボアの形成に関しては上述した正電荷と負電荷の環状ペンタペプチドの混合サンプルにおいてその混合比を変えることでイオン選択性が観察された。 また、環状ペプチド性チャネル形成に重要なナノチューブ形成の駆動力として報告されているアミド骨格問の分子間水素結合を阻害し、チャネル形成に与える影響を評価した。環状テトラペプチドcyclo(D-Ala-Dap)_2や環状ペンタペプチドcyclo(L-Gln)_5は分子間水素結合を変性させるに十分な尿素濃度8M条件下でチャネル形成能は大きく阻害された。また、円二色性スペクトル測定の結果より、尿素の有無によって195nm付近のアミド骨格に関する吸収が大きく変化したことより尿素分子が確かにペプチド構造自身に影響を与えることも観察された。これらのことから分子間水素結合が環状ペプチド性イオンチャネル形成、並びにイオン透過において重要な役割をしていることが示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目的の生物活性制御システムの各要素の確立において系統的な化合物合成を行い、特にイオン輸送機能に関してはイオン輸送量、イオン選択性などを実現することに道筋が立った。
|
Strategy for Future Research Activity |
環状ペプチドを用いた生物活性制御には、本年度に行ったイオン輸送以外の要素の確立が不可欠である。よってイオン輸送能以外の機能をもつ機能性環状ペプチド分子の合成並びに評価が今後の研究課題となる。そのためには、イオン輸送能以外をもつ機能性環状ペプチドの合成並びに物性、生物活性評価を行なっていく予定である。
|