2012 Fiscal Year Annual Research Report
アセチルCoAを選択的に検出する蛍光プローブを用いた細胞内代謝の可視化解析
Project/Area Number |
12J05559
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
高嶋 一平 九州大学, 大学院・薬学研究院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | アセチルCoA / 光誘起電子移動 / アセチル基転移反応 |
Research Abstract |
アセチルCoAは細胞内に比較的高濃度で存在するポリリン酸種であり(数十μM)、クエン酸回路、脂質合成などの生体内代謝における重要な基質分子である。細胞内アセチルCoAは細胞代謝に伴って数μMから数十μMレベルの濃度変動を生じ、細胞の代謝状況の亢進や減衰を捉える有用なパラメーターとなり得る。そこで本研究では、アセチルCoAを蛍光検出可能な蛍光プローブを開発し、細胞の代謝状態をアセチルCoAの蛍光イメージングを介して解析することを目的とする。筆者は、アセチルCoAと反応する前は蛍光色素に直結した官能基により光誘起電子移動(PeT)が生じて蛍光消光状態にあるが、アセチルCoAから色素に直結した官能基ヘアセチル基が転移すると、PeT消光が解消し蛍光が上昇するアントラセン型の人工小分子を設計した。本蛍光プローブを合成・評価した結果、比較的活性の低いアセチルCoAやチオ酢酸S一フェニルではアセチル基転移反応を生じず、高い活性を有する無水酢酸でのみアセチル基転移反応を生じて蛍光が上昇した。そこで、色素に直結した官能基へのアセチル基転移反応を加速するため、触媒能を有する数種の官能基を蛍光プローブ構造へ導入した分子を設計し、その合成とアセチル基転移反応の反応性評価を繰り返した。その結果、アセチル基転移反応を著しく加速する高い触媒能を有する分子素子を見出すことに成功した。今後は、本システムを用いて細胞などの夾雑な条件下でアセチルCoAを蛍光検出するため、上記と同様の分子設計で色素構造を変更した、長波長励起のフルオレセイン型蛍光プローブを開発する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
触媒能を有する官能基を様々に検討し、アセチル基転移反応を加速する新たな分子素子を見出すことに成功した。本分子素子を用いればアセチルCoAに対する多様な蛍光プローブを開発可能となる。また、上記とは別に蛍光レシオ変化を生じる新規の蛍光センシングシステムの開発にも成功した。本成果は現在Nature Chemistryに投稿中である。これら研究成果を組み合わせることで、従来の計画に比べてより高機能な蛍光レシオ型のアセチルCoA選択的な蛍光プローブが開発できると期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
上述のとおりアセチル基転移反応を著しく加速可能な分小素子を見出すことに成功した。そこで、本分子素手を用いて多様な蛍光プローブを新たに開発可能であり、本年度は細胞実験を指向した長波長励起のフルオレセイン型蛍光プローブを開発する。合成した蛍光プローブはin vitroでの基礎評価を行ったのち、問題なければ細胞内のアセチルCoAを蛍光解析する。また、昨年度において蛍光レシオ変化を生じる新たな蛍光センシングメカニズムを見出すことにも成功した。そこで本機構を応用してアセチルCoAに対する蛍光レシオ型プローブの開発についても模索していく予定である。
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