2013 Fiscal Year Annual Research Report
オオミジンコ (Daphnia magna) の環境性決定機構の解明
Project/Area Number |
12J05579
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Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
豊田 賢治 総合研究大学院大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ミジンコ(Daphnia pulex) / 環境依存型性決定 / 幼若ホルモン |
Research Abstract |
淡水性甲殻類に属するミジンコ(Daphnia pulex)は、世界中の河川や湖沼に広く分布している。ミジンコは生息に適した好適環境下では単為生殖によって雌のみで繁殖をおこなうが、環境条件の悪化に伴って雄を産生し、単為生殖から有性生殖へ生殖方法の転換を行うユニークな生存戦略をもっている。近年、本研究グループを含む国内外の研究グループにより、昆虫や甲殻類がもつ多機能性ホルモンである幼若ホルモン(JH)の曝露によって環境非依存的にミジンコの雄産生が誘導されることが明らかになった。このことから、環境条件の悪化を感受したミジンコ個体は体内のJH濃度を上昇させることで生理環境を変化させ、雄産生を誘導していると考えられてきた。しかし、実験室で自在に雌雄を産み分けられるミジンコ系統やその飼育条件が確立されていないため、実際にミジンコの性決定に内在性JHが関与しているのかは明らかにされてこなかった。しかし昨年度、我々の研究グループは飼育条件を変えることで雌雄の産み分けが可能な系統と条件の確立に成功した。そこで本年度は本系統を用いて以下の研究をおこなった。(1)雌雄誘導条件下における各種薬剤の投与による雌雄誘導の阻害試験と、(2)リアルタイム定量PCR法によるJHシグナル伝達経路に関わる遺伝子群の発現動態解析からJHがミジンコの雄誘導因子として働いているという仮説を支持するデータを多数得ることに成功している。さらに、(3)雌雄誘導条件間のトランスクリプトーム解析をおこなっており、ミジンコの性決定システムに関わる因子の探索を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
JH曝露を必要としない飼育条件による雌雄の誘導系の確立によって、JHがミジンコの性決定へ果たす機能の一端が明らかになってきた。さらに、従来のマイクロアレイによる候補遺伝子のスクリーニングに代わり、次世代シークエンサーを用いた解析から雌雄の誘導条件間で発現量に雌雄差のある遺伝子を多数見出すことに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、ミジンコのオス誘導時に内在性のJH濃度が上昇しているのか明らかにするために、LC-MS分析を用いたオス誘導条件時における内在性JHの直接定量法を検討している。この一年間の試行錯誤によって、JHの市販標品は測定可能になったが、ミジンコ抽出物中に内在性JHの分析を阻害する物質が含まれている可能性が指摘され、現在も測定法の改良をおこなっている。
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[Journal Article] Molecular impact of juvenile hor mone agonists on neonatal Daphniaomagna2014
Author(s)
Kenji Toyota, Yasuhiko Kato, Hitoshi Miyakawa, Ryohei Yatsu, Takeshi Mizutani, Yukiko Ogino, Shinichi Miyagawa, Hajime Watanabe, Hiroyo Nishide, Ikuo Uchiyama, Norihisa Tatarazako, Taisen Iguchi
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Journal Title
Journal of Applied Toxicology
Volume: 34
Pages: 537-544
Peer Reviewed
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[Journal Article] Molecular cloning of doublesex genes of four cladocera (water flea) species2013
Author(s)
Kenji Toyota, Yasuhiko Kato, Masaru Sato, Naomi Sugiura, Shinichi Miyagawa, Hitoshi Miyakawa, Hajime Watanabe, Shigeto Oda, Yukiko Ogino, Chizue Hiruta, Takeshi Mizutani, Norihisa Tatarazako, Susanne Paland, Craig Jackson, John K. Colbourne, Taisen Iguchi
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Journal Title
BMC Genomics
Volume: 14:239
DOI
Peer Reviewed
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[Book] Daphnia : Biology and Mathmatics Perspectives
Author(s)
Chizue Hiruta, Kenji Toyota, Hitoshi Miyakawa, Eri Sumiya, Taisen Iguchi
Publisher
Sexual reproduction is a key element in the life history strategy of water fleas, Daphnia magna and Daphnia pulex―Casting a spotlight on male induction and its morphology―(In press)