2012 Fiscal Year Annual Research Report
16世紀イベリア半島および西地中海地域におけるモリスコ
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12J05635
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
押尾 高志 千葉大学, 大学院・人文社会科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | モリスコ / アルハミーア / イスラーム / ファトワー読解 |
Research Abstract |
当該年度の4月-11月にかけては、科研費をあてて購入したパソコン等を用いて、平成23年度の調査で収集した史資料の整理・デジタル化を行った。同調査で収集したアルハミーア史料のうち、特にオランのムフティーが発したファトワーの読解を行い、転写を行った。このファトワーは、キリスト教徒支配下で如何にイスラームの実践を行うかというモリスコたちの問いに答えるものであり、彼らが信仰生活の何に重きを置いていたかを示す重要な史料である。 またインターネットを通じて、モリスコに関する刊行一次史料や研究書などを購入した。 12月-2月に行ったスペインでの現地調査では、国立図書館などでスペイン語・アルハミーア史料の収集を行ったほか、王立歴史アカデミー付属図書館では前述のファトワーのスペイン語版を入手した。上記の図書館に加え、学術研究高等評議会のM・ガルシア・アレナル教授の助言に従って、バレンシア・デ・ドン・ファン学院付属文書館でも調査を行った。同文書館には、16世紀中頃にグラナダにてモリスコ反乱に関するスペイン語史料のほか、クルアーンの写しなどアラビア語史料も保管されており、有意義な調査が行えた。 同調査期間中に、モロッコでの史資料調査も行い、テトゥアンのダーウード図書館では、ハスナ・ダーウード館長との面談を通して、マグリブ(特にテトゥアン)とモリスコの関係について新しい知見を得た。また、彼女の紹介により、テトゥアン総合図書館のアフマド・テイミ館長や、アンダルス史の専門家であるムハンマド・ベナブード博士などの知己を得たことは、本研究の今後の発展にとって重要であった。また、ラバトでは、国立図書館で資料を閲覧したほか、日本では入手困難なアラビア語のモリスコ関連研究文献を数多く購入した。 帰国後、調査をもとに「モリスコ研究におけるアルハミーア文献の重要性」という題で、研究プロジェクト報告書上で論稿を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の前半期については、これまで収集した史資料の整理、分析に取り組み、本格的な分析のための基礎作業ができたと思われる。とくにアルハミーアの史料の読解において、大いに進展が見られた。後半期は、スペイン及びモロッコにおいて史資料の収集を精力的に進めた。また、現地においてアンダルス史・モリスコ研究の諸専門家から助言が得られたことは、本研究の発展にとって大きな意義があったと考えられる。以上の理由により、当該年度の研究は、(2)おおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の前半期においては、引き続きこれまで収集した史資料の整理・分析を行う。特に、モロッコにて収集した現地の最新研究を分析することには大きな意義があると考えられる。これと平行して、学会発表を行い、その成果の一部を論文にまとめることを目指す。現段階では、日本中東学会やスペイン史学会、あるいはイスラーム地域研究・若手研究者の会での報告・論文投稿を想定している。日本中東学会においては現在、モリスコ研究の位置づけが確立していないので、本研究がその嚆矢となるだろう。また、スペイン史学会においては、アラビア語史料を中心に用いた報告を行うことで、本研究の独自性を示すことが出来るだろう。後半期には論文執筆に集中する予定だが、研究の進展如何によっては、再び現地調査(主にマドリード・テトゥアンを想定)へ赴くことも考慮に入れている。以上をふまえ、本研究はモリスコという集団の地中海的広がりを捉えることで、従来のモリスコ研究へ新たな論点を投げかけることが、その成果となるだろう。
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Research Products
(1 results)