2012 Fiscal Year Annual Research Report
神経障害性疼痛の日周リズム制御機構を基盤とした新規治療薬の創成
Project/Area Number |
12J05694
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
楠瀬 直喜 九州大学, 薬学研究院・薬剤学分野, 特別研究員(DC2→PD)
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Keywords | 神経障害性疼痛 / 日周リズム / グルココルチコイド |
Research Abstract |
神経障害性疼痛は、糖尿病やヘルペス感染等による神経障害が原因となって起こる難治性の慢性疼痛であり、より有効な治療薬の開発が望まれている。一方、神経障害性疹痛患者の症状には日周リズムが認められるが、その詳細なメカニズムは明らかとなっていない。本研究の目的は、神経障害性疼痛の症状の日周リズム制御機構を解明することを通じて、新規治療標的分子を同定することである。近年、様々な生体機能の日周リズムを制御しているグルココルチコイドが、神経障害性疼痛の発症においても重要な役割を果たしていることが明らかとなった。本研究では、神経障害性疼痛モデルマウスを用い、げっ歯類における主要なグルココルチコイドであるコルチコステロン(以下CORT)の本疼痛の日周リズム形成における役割を明らかとするために実験を行った。 ICR雄性マウスの坐骨神経を絹糸で結紮し、神経障害性疼痛のモデルマウスの一つであるPartial SciaticNerve Ligation(以下PSL)マウスを作成した。神経結紮後7日目におけるPSLマウスの血漿中CORT濃度をELISA法によって測定した結果、その濃度には疼痛閾値の日周リズムと対応した日周リズムが認められた。さらに、副腎を摘出したPSLマウスに浸透圧ポンプを用いてCORTを一定速度で皮下投与しCORTの概日リズムが消失したPSLマウスを作成したところ、本マウスの疼痛閾値の日周リズムは消失した。これらの結果から血漿中CORT濃度の日周リズムが神経障害性疼痛の日周リズムを引き起こす原因である可能性が示唆された。また、CORTは転写因子であるグルココルチコイド受容体の核内移行を促進し、遺伝子の発現を転写レベルで調節している。このことから、グルココルチコイドによる転写制御を受ける遺伝子が神経障害性疼痛の新規治療標的分子の候補となり得る可能性を見出すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画では、神経障害性疼痛の新規治療標的分子を特定するためにマイクロアレイによる解析を行う予定であり、そのために必要な予備実験を1年次までに終了させる予定であった。すでに、遺伝子の発現量を比較すべき検体を選択することに成功しており、現在マイクロアレイによる解析を行なっているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
神経障害性疼痛の日周リズム制御機構を解明するために、研究計画に従い以下の実験を行う。マイクロアレイによる解析によって抽出された遺伝子のmRNAおよびタンパク質の発現量を、それぞれreal time PCR法およびWestenl Blot法によって測定し、発現に日周リズムが認められる遺伝子を抽出する。各遺伝子の発現リズムが疼痛の日周リズムと対応するか否か確認する。疼痛の日周リズムと対応する発現リズムが認められた遺伝子の阻害剤またはsiRNAを神経障害性疼痛モデルマウスに投与し、鎮痛効果が認められるか否か検証することで、新規の治療標的分子としての妥当性を明らかにする。
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