2012 Fiscal Year Annual Research Report
三角格子マルチフェロイクスにおける電気磁気相関物性
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12J05696
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
車地 崇 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | マルチフェロイクス / 電気磁気効果 / フラストレーション / スピン・軌道相互作用 |
Research Abstract |
本年度は三角格子マルチフェロイクスMX2系の研究および、新規マルチフェロイクスの開拓を行った。 採用以前から取り組んでいた遷移金属ハロゲン化物Mx2系の内、NiI2とCoI2の電気磁気応答に関する結果を論文としてまとめた。これらがらせん磁気構造への転移に伴い、強誘電性を示すことを発見し、磁性と誘電性の強い相関があることを明らかにした。それぞれ複合秩序のドメインをコントロールすることあるいはスピン構造の転移を利用することにより電気磁気応答の観測に成功している。両者は共通した単純な結晶構造をもつにもかかわらず磁気相互作用のわずかなバランスの違いから磁気構造が異なっており、これにより両者で異なった電気磁気応答が観測されたと結論付けた。これまでは三角格子マルチフェロイクスにはプロパースクリュー型のらせん磁気構造しか見られなかったが、MX2系の研究により多彩な磁気構造が発現したときの電気磁気相関が明らかになった。今後これらの物質群を対象としてさらなる理論的・実験的研究が行われ、三角格子マルチフェロイクスの電気磁気相関の解明につながっていくと期待される。 本年度はさらに、MX2とは異なる構造を持つ新物質の開拓を行った。フラックス法または化学輸送法を用いて RFe3(BO3)4、M2Mo3O8の合成に成功している(Rは希土類、Mは遷移金属)。それぞれ結晶構造に掌性あるいは極性があるという特徴があり、従来のマルチフェロイクスとは異なる形での磁性と誘電性との相関があることを期待した。実際、どちらの物質系においても磁気誘起の電気分極が出ることを観測した。特にRFe3(BO3)4においてはFeだけでなく希土類も電気磁気応答に寄与していることが分かった。希土類が示す電気磁気応答に関する理解はまだ不十分で今後これらの物質群を調べていくことにより、希土類の果たす役割が明らかにされることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初からの研究対象であった遷移金属ハロゲン化物MX2系に関しては電気磁気応答の磁気構造依存性を解明しており、既に論文(1報)が出版されている。 MX2系以外の構造を持つ物質系における新規マルチフェロイクスの開拓に関しても、RFe3(BO3)4およびM2Mo3O8(Rは希土類、Mは遷移金属)の合成に成功しており、磁性と誘電性の強い相関があることを確認している。
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Strategy for Future Research Activity |
掌性を持ったマルチフェロイクスRFe3(BO3)4(Rは希土類)に関してはこれまで未解明であった希土類イオンが示す電気磁気相関を明らかにしたい。これにはこれまでの三角格子マルチフェロイクスにおける研究で提唱された電気磁気相関のモデルを拡張する必要があると考えている。電気磁気応答の磁場に関する異方性を調べることで、拡張されたモデルとの対応を検証することができる。また光に関する応答、特に方向二色性現象を利用して希土類イオンの果たす役割を調べることも効果的である。 新規マルチフェロイクスM2Mo3O8(Mは遷移金属)に関してはMの違いによる電気磁気応答の違いに注目している。特に結晶の極性と磁気誘起の電気分極との相関はMの電子状態・磁気秩序に依存することが期待される。電気磁気応答の微視的な起源の解明を目指す。
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