Research Abstract |
本研究の目的は, 社会的排斥(他者から無視されたり拒絶されたりすること)の検出システムと関わる神経基盤と個人差について検討することである。本年度は, 社会的排斥の検出と関わる個人特性(排斥検出能力)と社会的排斥の制御と関わる個人差(拒絶感受性)の差異に着目した検討結果を国内・国際学会で対外的に発表した。具体的には, (1)排斥検出能力の高さは過去の被受容経験・将来の被受容経験の多さと関連するのに対して, 拒絶感受性の高さは過去・将来の被受容経験の少なさ, 将来の被排斥経験の多さと関連する(2)排斥検出能力は嫌悪顔(社会的排斥の手がかり)に対する感度(N170)と関連する認知過程と関連する(3)拒絶感受性は嫌悪顔に対する認知的回避(P1)と情動制御不全(LPP)と関わる認知過程と関連する, の3つの研究結果について発表を行った。以上のことは, 社会的排斥を敏感に検出することは適応的であり, 適切に制御できないことが不適応に繋がる可能性を示唆している。これらの結果は介入法を考える際に有益な指針となるものである。具体的には, 社会的排斥の検出段階を歪めずに制御段階を修正する方法が有効であると考えられる。 上記の長期的な被排斥/受容経験や社会的排斥の手がかりに関する検討に加え, 被排斥経験後の認知・行動反応に関する研究も精力的に行った。これは, 両個人特性が被排斥経験後の認知・行動反応と関連する可能性があることに由来する。本年度はその端緒として行った, (1)被排斥経験後の表情に対する認知・行動(表情模倣)の変化(2)被排斥者と類似性の高い排斥者に対する攻撃性, の2つの研究結果について論文としてまとめ発表した(Kawamoto, Araki, & Ura, 2013 ; Kawamoto, Nittono, & Ura, 2014)。 最後に, 被排斥経験中の認知・感情・動機の変容について多面的な心理生理学的指標を用いた検討結果について論文にまとめ発表した(Kawamoto, Nittono, & Ura, 2013)。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は, これまでの研究成果を国際誌に投稿する。具体的には, 実験結果をPersonality and Social Psychology Bulletinに投稿し, これまでの研究を総括したレビューをFrontiers in Neuroscienceに投稿する。また, 社会的排斥検出の敏感さと関わる個人差の更なる詳細な理解を目指し, fMRIを用いた実験を行う予定である。
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