2012 Fiscal Year Annual Research Report
樹状細胞由来破骨細胞を中心とした歯周炎病態形成機構の"骨免疫学"的視点からの解明
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12J05841
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
河田 恵子 東北大学, 大学院・歯学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 分化誘導 / p63遺伝子 / TALエフェクター / 転写調節系の分子解剖 |
Research Abstract |
IKKシグナルソーム-p63シグナル経路上の因子の樹状細胞の維持、分化制御における機能及び、TALEを制御する造血・骨髄系転写調節因子の活性化・不活性化が多能性状態へ導く連続するステップ、階層的な遺伝子発現制御機構の変化の情報を得て、転写因子ネットワークの特性を利用した過剰な骨破壊に起因する疾患の新規治療法の開発を目指す。本年度の研究遂行の結果、課題1)では、LPS刺激に対する細胞応答細胞培養系を用いE.coli菌LPSが細胞に与える影響を検討した。樹状細胞を用いて、LPS刺激によるTLRシグナル伝達に果たすMyD88依存・非依存性経路の機能を調べたところ、LPS刺激により未分化なマウス樹状細胞から成熟細胞へ分化誘導すると、TLR4転写産物を介してTAp63βの上昇が認められた。このことより、癌抑制遺伝子p53ファミリーp63が、樹状細胞成熟の分子機構に関与していることがわかった。 機能発現に際して内因性の標的遺伝子の誘導だけでなく、同分子がアポトーシスの促進に伴い安定的に発現した場合、増殖が抑制されると考えられる。課題2)では、rtTAを発現するマウスES細胞株は、未分化な段階で造血幹細胞関連の抗原が13%検出されていたが、DOXY添加による特定TALE標的遺伝子を発現誘導すると、ES細胞株から調製した胚様体(EB)の分化誘導8日目にはその発現量が20%まで上昇した。EBのCFU法の分析でも、残存未分化な細胞集団CFU-GMおよびCFU-GEMの形成量の顕著な上昇が観察された。これらより、p63βを用いることで効率的に樹状細胞の成熟化を誘導するばかりでなく、樹状細胞のアポトーシスがプログラミングされることを明らかにした。また、EBにおけるTALE標的遺伝子誘導では発現量に相違のある細胞は残存未分化な細胞集団をなし、CFUの面でも異なる性質を示すことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本申請課題より、p63βアイソフォームを用いることで効率的に樹状細胞の成熟化を誘導するばかりでなく、樹状細胞のアポトーシスがプログラミングされることが明らかとなった。また、胚様体(EB)におけるTalエフェクター標的遺伝子誘導では発現量に相違のある細胞は残存未分化な細胞集団をなして、CFU法の面でも異なる性質を示すことが明らかとなった。この研究成果については、国際高血圧学会(ISH)(抄録本文:確定抄録)での発表予定であり、現在学術論文^<1)>として投稿準備中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本研究によって分化誘導可能となった各集団の遺伝子発現の比較解析により、特性の相違を生み出す分子機構を解明できる可能性があり、発達中の造血幹細胞および造血前駆細胞における種々の現象の分子機構の解明のため、新しい足がかりが構築されたと考えられる。そのため現時点では、細胞集団を対称とした解析ではデータが平均化され、個々の造血細胞の特性の差を評価することは出来ないため、細胞の分裂様式を単一細胞レベルで解析する必要があり、集積流体回路技術を応用したSingle Cell定量RT-PCR法により、造血幹細胞、前駆細胞および成熟細胞の性質の解析を行なう。また、本研究過程にともなって、TALエフェクターの繰り返し構造の13番目と14番目の2つのアミノ酸によって、人工的なTALエフェクター転写調節要素をいかにDNA結合特異性を持った骨髄系転写調節因子を調製し、TALエフェクターによるプログラミング・リプログラミングの制御能と相関することを見いだす。さらに、RUNX1転座型白血病細胞株(Kasumi1-RUNXI/ETO)用いて、正常な分化を復元するTALエフェクターの分化導入を評価する。
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