2012 Fiscal Year Annual Research Report
強力集束超音波と微細気泡を用いた非侵襲腫瘍治療技術のための数理的研究
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12J05892
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
金川 哲也 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 集束超音波 / HIFU / 医用超音波 / 非線形波動 / 超音波トモグラフィ / 非線形音響学 / 画像再構成 / マイクロバブル |
Research Abstract |
代表者らのグループでは、超音波による診断・治療の融合器を創成すべく、音で診て音で治す、USCT (UltraSound Computed Tomography)とHIFU(High Intensity Focused Ultrasound)の統合を提案している。これは、国内外を問わず報告例が皆無な革新的チャレンジであるが、生体中の音響伝播の複雑さゆえに、その基盤すら報告例は皆無である。本年度は、基礎的側面に重点をおき、診断と治療おのおのを、理論的・数値的・実験的に調べた。HIFUによる腫瘍焼灼などの低侵襲治療は、非切開手術であるがゆえに、治療中の患部を視認できない問題を有する。現在の腫瘍のリアルタイム可視化技術の主流はMRIであるが、高価かつ装置の大型化などの欠点を打開せねばならない。そこで、診断をも音に委ねるUSCTを提案する。乳房のように、骨などの硬組織を含まず、かつ、異媒質間の音響インピーダンスの差がわずかな軟組織であるならば、屈折や回折による音の経路の変化は大きくはなく、その有用さが期待される。リング型アレイトランスデューサを使い、乳房をリングで覆い囲むように音源を配置し、各素子から乳房に向けて放射された透過超音波を受信し、乳房内部の画像再構成(CT)を行う。CTでは、組織の音速などの空間分布が計算可能であるがゆえに、CTの情報をもとに、腫瘍焼灼中におけるHIFU照射の高精度制御が期待される。音速の温度依存性をとおして、焼灼中の温度上昇を予測することで、腫瘍近傍組織の加熱といった悪影響をも回避可能にすることが、診断・治療統合器の最大の利点といえる。HIFUの死亡事故という最悪な事例が散見されるが、「治療部位をきちんと診さえすれば」回避できるがゆえ、ここで改めて「モニタリング」の重要性を強調しておく。 本年度の具体的成果を、診断・治療の両側面から述べる:(1)診断:音は回折・屈折・反射を伴うが、これらを無視した直進CTを遂行し、どの程度の精度の画像再構成が可能かを調べた[日本機械学会流体工学部門一般表彰(優秀講演表彰)(金川哲也)受賞]。次年度は、屈折や回折を考慮した数値的検討を行う。(2)治療:気泡を含む液体中の超音波伝播に対して、理論・実験の両手法から基礎研究を行った。前者では、音の周波数の高低を系統的・統一的に扱う理論体系を提案した[2011年度日本機械学会賞(論文)受賞]。後者では、マイクロオーダのSonazoidを用いて、気泡群が壊れない程度の低強度超音波を用いて、音場計測系の構築および気泡の共振を考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画には含まれていなかった、医用超音波による診断・超音波CTの基礎的検討にも携わった点、および、マイクロバブルに係る音場の実験的検討をも遂行した点は、計画以上の進展と判断する。しかしながら、数理的研究という申請題目に即すような、新規性のある結果は、いまだ得られておらず、入り口に迫った程度に過ぎない。以上を総合視し「おおむね順調に進展している」との自己評価を下す。
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Strategy for Future Research Activity |
超音波診断の数理およびアルゴリズムに関しては、欧米の先行研究を眺めると、偏微分方程式論・逆問題に詳しい応用数学者とのコラボレーションが散見され、当研究においても応用数学者の参入が必要と考えている。現在、他機関の応用数学者の助言を乞うている最中にあり、次年度以降、申請者の得意とする応用力学的側面とのコラボレーションを計画している。一方、マイクロバブルと超音波の理論は、申請者の専門でもあり、これまでどおりに遂行するが、実験に関しては、所属機関内の超音波計測工学の専門家との密な打合せのもと、精密な計測および厳密な考察を遂行する予定である。
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Research Products
(19 results)
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[Presentation] 超音波CTを用いた超音波診断治療の基礎研究2012
Author(s)
中村弘文, 青柳良祐, 金川哲也, 東隆, 葭仲潔, 佐々木明, 杉山和靖, 高木周, 松本洋一郎
Organizer
第11回日本超音波治療研究会
Place of Presentation
KITENコンベンションホール(宮崎)(Young Investigator Award 受賞)
Year and Date
2012-11-17
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