2012 Fiscal Year Annual Research Report
都市形成過程における社会階層による居住分化の変遷とそのメカニズムに関する研究
Project/Area Number |
12J05897
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
上杉 昌也 東京大学, 大学院工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 居住分化 / 小地域推計 / 近隣満足度 / 近隣居住者属性 |
Research Abstract |
本研究の目的は、コミュニティ形成に重要となる社会階層の空間分布に着目し、その形成メカニズムを社会階層の空間的配置の変化とその要因から解明するものであり、今後の都市居住政策に資する知見を得ることにある。本年度の研究成果は以下のとおり。 居住者属性の分布を推定する小地域推計では、当初よりもより詳細な空間単位での居住者属性の推計が有効であると考え、最新のデータを用いて街区単位での推計を行った。はじめに、住宅地図データ、国勢調査小地域集計、政府統計の個票データなど推計に利用できる統計データやGISデータを収集し、実際に街区単位居位者属性データベースを作成した。位宅地図の建物情報と国勢調査の町丁目集計結果と整合するように組み合わせることで、街区単位での世帯類型別世帯数や世帯収入別世帯数などを推計することができ、本研究にとって有用なデータとなった。 続いて上記で作成したデータを利用して、居柱者の混在化や居住分化に関する評価分析を行った。具体的には、住生活総合調査データを用いて、近隣居住者属性の構成が居住満足度に与える影響をロジスティック分析により定量的に明らかにした。本分析では近隣効果の空間単位による違いや地域内での居住者階層による影響の違いに着目したことで、外部性の及ぶ空間単位や居住者階層ごとの影響は一律でなく、とくに低階層ではいずれの空間範囲でも周囲の影響を受けにくい一方で高階層においてはより広い範囲で有意な影響を受けやすいことを明らかにした。さらにヘドニックアプローチにより, 近隣居住者属性の構成が地域の価値(地価)に与える影響についても分析を行った。その結果、居住者属性の多様性よりも低所得層や単身層が地域に占める割合が高い方が地価にマイナスの影響を与えていることが明らかになり、人口密度や土地利用など地域によってもその影響が異なることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初想定していた研究の順序は若干前後したが、研究内容の面では一定の成果が得られたため。
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Strategy for Future Research Activity |
評価分析において、具体的にどのような要素を媒介して居住不満度を高めたり、地域の価値にマイナスな影響を及ぼしているのかについては検討の余地がある。この点については研究課題である居住分化の要因の解明に大きくかかわると考えられるため来年度の課題として取り組む予定である。また、未発表の研究成果についても論文等に取りまとめて公表する予定である。
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Research Products
(2 results)