2012 Fiscal Year Annual Research Report
歯の損傷後の歯髄治癒過程における象牙芽細胞分化機構の解明
Project/Area Number |
12J05934
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
斎藤 浩太郎 新潟大学, 大学院・医歯学総合研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 歯髄幹細胞 / アポトーシス / 象牙芽細胞 / 歯の損傷 / 再植 / 移植 / 窩洞形成 / マウス |
Research Abstract |
本年度では、マウスを用いた歯の再植・移植、窩洞形成実験系を利用し、歯の損傷後の歯髄治癒過程における象牙芽細胞分化機構を解明することを目的とし、下記の2つの研究を行った。 (1)マウスを用いた歯の窩洞形成実験系の確立と術後の歯髄治癒過程における歯髄幹細胞の動態についての解析 術後12時間から1日では、窩洞直下の象牙芽細胞および象牙芽細胞下層の細胞に変性像およびTUNEL陽性反応が認められ、歯髄中央部にもTUNEL陽性反応が認められた。また、歯髄幹細胞/前駆細胞と思われるBrdUラベル細胞が歯髄中央部に維持されていた。術後2から3日では、近心歯髄の細胞増殖活性が亢進し、術後3から5日では、ラベル細胞がnestin陽性の象牙芽細胞様細胞にコミットされていた。 以上より、マウスを用いた歯の切削により、象牙芽細胞および象牙芽細胞下層の細胞と、歯髄中央部に2段階のアポトーシスが惹起されること、歯髄幹細胞/前駆細胞は高い増殖能と象牙芽細胞への分化能を維持していることが示唆された。 (2)マウス舌下部自家・他家移植および再植後の歯髄幹細胞の維持機構の解析 再植および舌下自家移植後の歯髄では、実験期間中を通してBrdUラベル細胞が維持されており、これらの細胞は高い増殖能と象牙芽細胞への分化能を有していた。一方、舌下他家移植後の歯髄では、ラベル細胞は術後4週に歯髄中央部から消失した。舌下他家移植では、術後1週においてラベル細胞のアポトーシスが有意に亢進していたが、再植および舌下自家移植では有意差は認められなかった。以上より、他家移植に伴うドナー・ホスト間相互作用が歯髄幹細胞/前駆細胞の維持を阻害し、これらの細胞の消失を誘導することが示唆された。 歯髄再生療法の開発を目指す上で重要な科学的基盤となるのが歯髄幹細胞の生物学的特性の理解であるが、上記の成果は歯の損傷後の歯髄幹細胞の動態や維持機構の解明に大きく寄与するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度では、歯の損傷後の歯髄治癒過程における歯髄幹細胞1前駆細胞の動態について解析を行った。興味深いことに、再植や舌下自家移植後の歯髄では歯髄幹細胞1前駆細胞が維持されていたが、舌下他家移植後の歯髄では免疫学的拒絶反応が起こらない場合においてもこれらの細胞が維持されなかった。これらの知見は歯の損傷後の歯髄幹細胞の維持機構の解明へ向けて大きく前進させることが期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
歯の損傷後の歯髄治癒過程では、骨髄由来細胞の関与、特に樹状細胞やマクロファージなどの免疫細胞が分泌するタンパク質であるオステオポンチンが象牙芽細胞分化に関わることが示唆されているが、その機能的意義は不明である。今後は、歯の損傷後の歯髄治癒過程における骨髄由来細胞の影響についての解析に着手する。GFP骨髄移植マウスを用いて舌下部への歯冠部他家移植実験を行い、術後の歯髄治癒過程を組織学的に検索する。また、オステオポンチンの歯の損傷後の象牙芽細胞分化への寄与のメカニズムを解明すべく、オステオポンチン遺伝子欠損マウスを用いて歯の損傷実験を行い、さらに象牙質・歯髄複合体の器官培養実験を行う。
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Research Products
(2 results)