2012 Fiscal Year Annual Research Report
組織工学分野での応用を目的とした注射可能な機能性医療材料の創製
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12J05940
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
森山 幸祐 九州大学, 大学院・工学府, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ハイドロゲル / 西洋ワサビ由来ペルオキシダーゼ / ポリエチレングリコール / ストレプトアビジン / ペプチドタグ / タンパク質修飾 |
Research Abstract |
本研究では、家畜伝染病が懸念される動物性高分子由来足場材料に替わる、新たな組織工学用材料の創製を目指している。本年度は、足場材料として安全性の高い合成高分子を用いたハイドロゲルの作製を行い、さらに高分子ネットワーク内にタンパク質を組み込むことで新たな機能付与を試みた。高分子間の架橋反応としては、穏和な条件下においてフェノール類のカップリング反応を触媒する西洋わさび由来ペルオキシダーゼ(HRP)の酵素反応を利用した。また、高分子材料としては、安全性の高い合成高分子である直鎖型ポリエチレングリコールを選択し、その両末端にフェノール性水酸基(Ph-OH)を修飾した(PEG-Ph-OH)。PEG-Ph-OH水溶液にHRP触媒反応を作用させたところハイドロゲルの形成が確認され、そのゲル化時間は高分子の分子量及び各成分濃度を変化させることで制御可能であった。さらにゲル内への細胞包括を試みたところ、高い生存率を維持したまま細胞を包括することが可能であった。次にPh-OH基を有するアミノ酸(チロシン(Y)を含むペプチドタグを導入したストレプトアビジン(SA)をPEG-Ph-OHと共にHRP触媒反応を作用させることで機能性ハイブリッドゲルの作製を試みた。作製したハイブリッドゲルに対し、ビオチンを修飾した緑色蛍光蛋白質(biotin-EGFP)を固定化し、蛍光イメージャーによる観察を行った結果、EGFPに由来する蛍光が観察された。一方で、ゲルにSA-G4Yを修飾していない条件やEGFPにビオチンを修飾していない条件では、EGFP由来の蛍光が観察されなかったため、biotin-EGFPはアビジンービオチン相互作用により固定化されていることが示された。今後は、ビオチン化した生理活性物質を固定化することで組織工学用材料としての有用性を評価していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では新たな組織工学用足場材料の創製を目指し研究を行っており、本年度までに安全性の高い合成高分子ゲル化剤の開発や、タンパク質修飾による機能付与を達成しており、おおむね期待した結果が得られている。しかしながら、本年度は材料の物性等、主に基礎評価を行ってきたため、今後は組織工学分野への応用を重視した評価を行っていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの検討結果より、PEG-Ph-OH及びSA-G4Yから成るハイブリッドゲルは様々なビオチン化タンパク質が固定化可能であることを示唆する結果が得られている。そこで今後はビオチン化した細胞接着ペプチドや増殖因子等を固定化した機能性足場材料を作製し、そのゲル内部において細胞の3次元培養を行う予定である。
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