2013 Fiscal Year Annual Research Report
多機能型高分子固定化ナノクラスター触媒を用いた反応集積化システムの創成
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12J05992
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
安川 知宏 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | タンデム反応 / 不均一系触媒 / キラルナノ粒子 / キラルジエン / ロジウムナノクラスター / 不斉1,4付加反応 |
Research Abstract |
エステルは多様な官能基に変換可能であり、特に不斉点を有するエステル類は合成中間体として非常に有用である。そこでこのような化合物の合成、より高活性な触媒の開発、タンデム反応への応用を見据え、昨年度報告した、ポリスチレンを基本骨格とした高分子及び活性炭を混合した担体にロジウム・銀二元ナノ粒子を固定化した触媒(PI/CB Rh/Ag)を用いた不飽和エステル類へのアリールボロン酸類の不斉1,4-付加反応の開発を行った。従来のキラルジエン配位子ではエナンチオ選択性が不十分であった為、配位子に金属への配位に加え、基質への相互作用を可能とする二機能性配位子を設計し検討を行ったところ、二級アミドを有するキラルジエン配位子を用いた際に非常に高い選択性で目的物が得られた。本配位子を用いたキラルナノ粒子触媒は、0.1mol%以下の触媒量で広範な基質に対し非常に高選択的かつ高収率で目的物を与えた。同じキラル配位子を用いた均一系金属錯体触媒も従来の触媒を凌駕する高い反応性、選択性を示したが、不均一系ナノ粒子触媒の方が選択性、活性共に優れ、より実用的な触媒である事が示された。 上述のPI/CB Rh/Agは高い有用性を示したが、担体の調製が煩雑である、銀の添加が高活性に必要不可欠である等の欠点を有し、また粒径分布が広範で、ナノ粒子の金属組成も粒子ごとにランダムであり、今後反応機構や活性種の同定を行うにあたり適切な系とは言い難い。そこでバイオマス由来の高分子であり環境に優しいリサイクル可能な固相担体であるセルロースに着目し、粒径の揃ったRhナノ粒子触媒の開発に着手した所、Agの添加なしに高活性を有し、金属漏出も抑制されたセルロース担持ナノ粒子触媒の調製に成功した。また、複数のパルスプログラムを組み込んだ固体NMR測定により、ナノ粒子表面上に吸着した配位子の観測にも成功した。この知見は従来推定が困難であった不均一系触媒反応の機構の解明への非常に強力な手法となり得る。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
反応の開発に当たり、二機能性配位子を用いた所、非常に高い選択性と活性を示したのみならず、ごく少量の触媒を用いた際に、不均一系キラルナノ粒子触媒が均一系金属錯体触媒の活性や選択性を上回るという予想外の結果が得られ、キラルナノ粒子触媒の高い有用性と発展性を示せた。また、新たに調製したセルロース担持触媒を特殊な固体NMR観測を行う事で、これまで未解明であったナノ粒子触媒の反応機構解明への糸口を見出せた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度開発した不斉1,4-付加反応を、酸素酸化反応及び不飽和結合生成反応と組み合わせたタンデム反応に組み込み、より単純な基質を出発物質に、反応集積化により一挙に複雑骨格を構築したい。また、キラルナノ粒子触媒を、有機分子触媒やルイス酸触媒と組み合わせ、より不活性な基質に対する不斉C-C結合生成反応の開発を目指したい。開発した触媒反応を大量スケール実験、医薬品などの有用化合物の合成等に適用する。セルロース担持触媒を用いた固体NMRによるナノ粒子表面上の分子を観測する手法を更に最適化し、配位子のみならず基質の吸着能や中間体の同定など応用範囲を広げ、不均一系ナノ粒子触媒反応における活性種や反応機構の解明に努めたい。
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Research Products
(7 results)