2012 Fiscal Year Annual Research Report
ヒアルロン酸合成過程で発見された新奇オリゴ糖、その機能と個体老化における意義
Project/Area Number |
12J06014
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
飯島 順子 京都産業大学, 総合生命科学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | ヒアルロン酸 / オリゴ糖 |
Research Abstract |
ヒアルロン酸合成酵素(HAS)2を過剰発現させた細胞膜画分をN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)と伴にin vitroで60分間反応すると、ヒアルロン酸とは別に合成量が2倍以上に増加するオリゴ糖が確認された。このオリゴ糖合成は1)反応開始15分後には確認され、且つ、2)ヒアルロン酸分解酵素の遺伝子発現に差はない、更に、3)GlcNAcとグルクロン酸(GlcUA)の繰り返しから成るヒアルロン酸とは異なりGlcUAを含まない構造である、などのことから、このオリゴ糖はヒアルロン酸の分解産物ではなく、ヒアルロン酸と連動して合成される未知の構造を持つ新奇オリゴ糖であることが分かった。 このように新奇オリゴ糖はヒアルロン酸と異なる組成から成る一方、構造解析の過程から、ヒアルロン酸と同様に糖鎖の還元末端にヌクレオチドを持つことが示唆された。ヒアルロン酸の合成の初期過程は未だ不明であるが、特殊な構造を持つ新奇オリゴ糖は、ヒアルロン酸の初期合成におけるプライマーとして働く可能性が考えられる。 更に、新奇オリゴ糖は膜にとどまらずに反応液に放出されたことから、リガンドとしての機能を果たす可能性が挙げられる。ヒアルロン酸が分解してできたヒアルロン酸オリゴ糖は細胞外受容体を介するシグナル伝達に関与する事が考えられているが、このように従来、ヒアルロン酸の機能と理解されていた現象の一部は新奇オリゴ糖が担っている可能性がある。また、新奇オリゴ糖はヒアルロン酸と全く異なる機能を果たすかもしれない。 新奇オリゴ糖の存在は、ヒアルロン酸の合成と機能がこれまでの知見より複雑である事を示唆し、新奇オリゴ糖の機能と共にヒアルロン酸の合成機構、機能を正確に理解する上で非常に重要であると言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新奇オリゴ糖の機能解析を、in vitroで合成した新奇オリゴ糖を用いる手法から、構造解析を優先する事で解析結果に基づいた人工的に合成したオリゴ糖を用いる手法に変更した。この事は前者合成系に含まれる不純物の影響を取り除き、純粋な新奇オリゴ糖の機能を同定することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
上記11.で示した通り、新奇オリゴ糖の正確な機能を理解する為に、機能の解析に用いる新奇オリゴ糖を、in vitroで合成したものから、不純物を含まない人工合成したものに変更することにした。つまり、in vitroで合成した場合、反応系や生成系に含まれる物質やオリゴ糖合成の基質となるGlcNA,糖の分解物が含まれる。これらの影響を受けずに新奇オリゴ糖の正確な機能を調べる対応策として、第一に新奇オリゴ糖の構造を明らかにすることで、構造に基づき人工的に合成した不純物を含まない新奇オリゴ糖を用いる。
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