2013 Fiscal Year Annual Research Report
炭化タングステン-コバルト系超硬合金における粒成長機構の解明及び制御
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12J06087
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
杉山 一生 東京大学, 大学院工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 超硬合金 / WC-Co / サーメット / 透過型電子顕微鏡 |
Research Abstract |
切削や掘削を始めとする様々な工具用材料として用いられるWC-Co系超硬合金は、WやCoという資源戦略上重要な元素を多量に含有することから、これらの元素の使用料削減や材料の特性向上による工具の消費量削減が強く求められている。WC-Co系超硬合金の機械特性は、WC粒の粒径に依存することが知られており、VCなどの炭化物を添加して焼結中の粒成長を抑制することにより機械特性が向上する。本研究では、材料の特性向上への要求に対し、粒成長機構及び粒成長抑制機構を詳細に明らかにすることにより、ボトムアップの材料設計指針を示すことを目的としている。本年度は、粒成長抑制目的で添加されたVCがWC/Co界面に形成する(W,V)Cx相がどのようにして粒成長を抑制しているのか明らかにするため、界面に偏析している(W,V)Cx相の3次元的な形態観察を行った。その結果、WC/Co界面には、WC粒と(W,V)Cxとの格子ミスマッチに依存した形状の(W,V)Cx相が形成されることが判明した。特に、格子ミスマッチが小さい面上には薄い(W,V)Cxのレイヤーが数層形成され、この層によって粒成長が強く阻害されていることが判明した。格子ミスマッチが大きい面上には島状の(W,V)Cxが点在し、WC/Co界面が(W,V)Cxによって十分に覆われていないために粒成長が極めて早く進行することが明らかになった。以上により、WC粒と粒成長抑制相との格子ミスマッチを制御することで、粒成長をより精密に制御できることが明らかになったことから、添加物の添加量や合金中の炭素組成を厳密に制御することで、粒成長抑制相の組成を変化させ、格子ミスマッチを制御することで、より工業的に優れた超硬合金の創成が可能になると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
WC-Co系超硬合金の特性向上に向けた材料設計指針の提示という最終目的に向けて、本年度では添加物が粒成長抑制において果たす役割を明らかにしている。次年度において実際に組成を制御した合金における粒成長様式の違いを明らかにすることで、上記目標は十分に達成可能であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である来年度は、本年度に得られた成果を元に、合金中の炭素量を変化させた複数の試料を作製し、透過型電子顕微鏡を用いた構造解析を行うことで、合金組成による粒成長機構の違いを明らかにする。この成果をこれまでの成果と合わせて考察することにより、超硬合金の特性向上に向けた材料設計指針を提示する。
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Research Products
(7 results)