2013 Fiscal Year Annual Research Report
分配的正義の理論におけるケイパビリティアプローチについての理論的研究
Project/Area Number |
12J06104
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
松山 淳 一橋大学, 経済研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | ケイパビリティ / 正規・非正規雇用 / 労働節約的技術変化 / 線型生産モデル / 被災地復興 |
Research Abstract |
1. ケイパビリティ・アプローチの資源配分理論に関する研究. 本研究は、ケイパビリティ・アプローチに基づく2人経済モデルを構築し、2つの財の分配ルール(ケイパビリティ集合の最小格差に墓づく分配ルールおよびケイパビリティ集合の最大共通部分に基づく分配ルール)がSen (1973)による衡平性の公理を満たすことを示した. 2. 正規・非正規労働者間の賃金格差の拡大が経済に与える影響に関する理論的研究. 佐々木啓明氏(京都大学)、迫一光氏(高千穂大学)との共同研究. 本研究は、2つの異なる労働(正規労働、非正規労働)を有するマクロモデルを用い、正規労働と非正規労働との賃金格差拡大がマクロ経済に与える影響を分析し、またある条件の下で生じる景気循環に対し、最低賃金導入が景気循環に与える影響を分析した. 分析により、賃金格差の拡大は経済を不安定化させることが、最低賃金を適切に導入すると景気循環の振幅を緩和することが明らかになった. 3. 労働節約的技術変化と個人間所得分配の不平等の関係についての理論的研究, 本研究では、正規・非正規雇用および失業に焦点を当てた線型生産モデルを構築し、労働節約的技術変化がローレンツ曲線で測られた経済の不平等度に与える影響を分析した. 労働節約的技術変化は、労働部門全体にいわゆる技術的失業をもたらす一方で、正規・非正規雇用の賃金格兼を拡大させる. その結果、労働節約的な技術変化が仕会の2極化を促進する可能性が明らかになった. 4. 住民主導の復興活動が被災地における転出行動に与える影響に関する理論的研究. 荒井壮一氏(秋田大学)との共同研究・本研究では、文化伝承モデルを用い、企業への補助金政策が定常状態における被災地住民の人口シェアに与える影響を分析し、もし政策が失敗(人口シェアゼロ)の場合においても、住民主導の復興政策を行うことで、被災地住民の人口シェアを下げ止め得ることが明らかになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度および平成25年度の研究成果を6本の論文(ディスカッションペーパーを含む)としてまとめることができた。そのうちの2つの論文について、一つは国際誌にもう一つは国内誌(いずれも査読有)への掲載が決まった。また、平成25年度の研究を行うにあたり、これまでの研究をさらに発展させるような、新たな研究課題を見つけることができた。以上の理由により、②おおむね順調に進展しているという自己評価が妥当である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の研究計画は、平成24年度及び平成25年度の研究成果に基づき、つぎの3点について研究を行う. 第一に、ケイパビリティを福祉の指標とした資源配分問題に関するケイパビリティ・アプローチの理輪的研究である。とくに、ケイパビリティの評価の問題ついて、研究を行う。第二に、規範理論の観点からのケイパビリティ・アプローチの研究を行う。第三に、ジェンダー問題、障碍者の問題を念頭に、ケイパビリティ・アプローチを用いた経済問題への応用研究を行う。
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Research Products
(7 results)