2012 Fiscal Year Annual Research Report
アフリカ農村部におけるリスクと貧困に関する実証研究 -生産資産の変動に着目して-
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12J06135
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
三浦 憲 一橋大学, 大学院・経済学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 生産資産 / インデックス保険 / 貧困の罠 / 天候リスク / Basis Risk / 予備的貯蓄 / サブサハラ・アフリカ |
Research Abstract |
第一に、一橋大学大学院経済学研究科に提出した論文の改訂稿"Shock and Livestock Transactions i Rural Zambia:a Re-examination of the Buffer Stock Hypothesis"が日本農業経済学会の英文査読誌Japanese Journal of Rural Economicsに2012年4月に掲載された。本稿は、ザンビア農村部で収集した週次パネルデータを用いて洪水生起後の家畜取引の役割を論じた論文である。分析の結果、家畜資産をあまり持たない家計は洪水生起直後に大家畜の売却処分が見られたのに対して、家畜資産を多く持つ家計は洪水が生起した1年以上後に大家畜の取引が観察されていることが判明し、年次データを用いている先行研究において見過ごされてきた家畜取引の存在の可能性を指摘した。本稿は2013年度日本農業経済学会学会誌賞を2013年3月に受賞した。第二に、天候ショックから農民を保護する政策の立案のために、天候インデックス保険の研究を実施した。過去の家計調査データを最大限に利用するために、上記論文で使用したデータのサンプル村を含む9村でザンビア農業研究所と協力し、独自に設計した降雨量インデックス保険の販売を2011年11月より実施した。1年目の2011年には101家計に対して販売を実施し、続く2年目の2012年10月には160家計に対して販売を行った。販売実績は先行研究が報告している低い購入者比率とは異なり、我々の調査地域では両年ともに90%以上の農民が保険契約を最低1口以上購入したが、本保険により穀物被害を補てんするだけに十分な購入は見られなかった。本研究に基づく研究発表は日本農業経済学会2012年度ポスター賞を2012年3月に受賞した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
生産資産の変動が天候ショックにより引き起こされていることを実証した点、および、天候リスクを保険する制度の立案に資する研究を実施できている点をかんがみると、当初の研究の目的は順調に満たされていると結論付けられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2013年6月に家計調査を実施予定である。収集されたデータと過去の天候保険の販売データを組み合わせて、フォーマル保険の提供を通じて天候リスクが保険されたことにより相対的にリスクの高い(同時に収益性も高い)農業技術を採用が促されたかどうかを2013年度に考察する予定である。 また保険需要の決定因子に関する研究も論文としてまとめ、国際誌に投稿する予定である。
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Research Products
(6 results)