2012 Fiscal Year Annual Research Report
高感度過酸化水素検出系の構築に基づく生理的過酸化水素産生の可視化
Project/Area Number |
12J06170
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
安保 真裕 九州大学, 医学研究院, 特別研究員(PD)
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Keywords | 蛍光プローブ / 過酸化水素 / タグタンパク質 |
Research Abstract |
過酸化水素は生体内においてシグナル伝達因子として働く重要な分子であり、これに対する高感度な検出系を開発することは生物学において重要な課題である。過酸化水素の生体内における産生は、短時間かつ局所的であり、細胞内においていつどこで過酸化水素が産生されたかを知る必要がある。そこで私は、有機小分子に基づく過酸化水素に対する蛍光プローブとタグタンパク質技術を融合することで高い時空間分解能と高い感度を両立する検出系を開発できるものと考え、研究を行っている。初年度には、まずタグタンパク質にラベル化するための過酸化水素蛍光プローブの合成を有機合成化学の手法によって行った。その結果、タンパク質タグの一種であるSNAPタグへのラベル化部位であるbenzylguanine構造をもつプローブの開発に成功した。本蛍光プローブは、in vitroにおいてSNAPタグタンパク質にラベル化され、ラベル化された状態においても過酸化水素への応答性を保持していることが確認された。そこで次に、生細胞での応用を行うべく、細胞膜の細胞質側にSNAPタグを発現するための融合タンパク質の開発を行った。細胞膜にタグをターゲッティングする理由としては、生体において過酸化水素の産生を担う重要な酵素として、NADPH oxidase(Nox)があるが、NoxはPMA刺激や貪食時に細胞膜に存在する酵素サブユニットへと制御サブユニットが集積して活性化され、スーパーオキサイドおよび過酸化水素を産生する。そのような過酸化水素を検出するためには、プローブを細胞膜へと局在させることが適切だと考えられるからである。この考えに基づき、七回膜貫通型の膜タンパク質とSNAPタグの融合タンパク質のコンストラクトを作製し、RAW264.7細胞での発現を確認したところ、細胞膜にSNAP融合タンパク質が局在する様子が確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
私はこれまでに、有機合成化学的手法を用いて、SNAPタグラベル化用の過酸化水素検出蛍光プローブの合成に成功した。また、このプローブがSNAPタグにラベル化されること、およびラベル化された状態でも過酸化水素への応答能を保持していることをin vitroにおいて確認した。また、生細胞応用へ向けて、SNAPタグを細胞膜へターゲッティングさせるためのコンストラクト作製にもすでに成功した。これまでの成果は研究計画において想定していた通りであり、研究は順調に進展しているものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究方針としては、これまでに開発を行ったSNAPタグラベル化用の過酸化水素検出蛍光プローブと細胞膜へSNAPタグをターゲティングするためのコンストラクトを用いて、蛍光顕微鏡による過酸化水素の生細胞イメージングを行っていく予定である。用いる細胞としては、まずマウス由来のマクロファージであるRAW264.7細胞においてPMA刺激や貪食などにおける過酸化水素産生のイメージングを試みるが、それに成功した後には、ヒト好中球を用いて過酸化水素の生細胞イメージングを行っていく予定である。
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Research Products
(1 results)