2012 Fiscal Year Annual Research Report
海洋における炭素貯留効果におよぼす藻場由来バイオマスの定量的評価
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12J06184
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
國分 優孝 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 藻場 / 海産大型植物 / 流れ藻 / 海底トロール網 / 採集効率 / 堆積量 / 東北太平洋岸沖合 |
Research Abstract |
特別研究員の採用期間2年間の1年度目において、深海底における海産大型植物の堆積状況、深海底における海産大型植物の現存量の季節変化に関する知見を得ることができた。さらに、これまでの一連の研究成果を総合して博士学位論文としてまとめた。 (1)深海底における海産大型植物の堆積状況 本年度は、2008年から2010年に東北区水産研究所が東北海域で行った566点にのぼる豊富な海底トロール網による実測データを解析し、距岸10-100km、南北500km、底深40-1,800mの平坦な大陸棚海底で、海産大型植物が堆積物として存在している事実を初めて確認した。それら構成種は褐藻類19種、海草類2種、緑藻類1種、紅藻類1種であった。出現率が高い種には明瞭な季節変化が見られ、春季と夏季に最も出現率が高かったのは褐藻ホンダワラ類のアカモクで、秋季は海草類であった。 (2)深海底における海産大型植物の現存量 海底に堆積した海産大型植物の現存量に関する知見は極めて乏しい。そこで、東北区水産研究所の調査で使用した開口板つき海底トロール網の海産大型植物に対する採集効率を実験により求め、その得られた採集効率を用いて採集物の湿重量を補正し、海洋底上の海産大型植物の現存量を求めた。その結果、海産大型植物の現存量は毎年夏に毎年夏に増大し、30-70(mg湿重/m2)に達することを確認した。 (3)深海底に堆積された海産大型植物の起源 モデル開発に詳しいフランス領コルシカ大学のJean Baptiste Filippi博士のもと、コルシカ大学に滞在し、JAMSTEC地球シミュレータの海洋大循環モデルOFESに基づいた流れ藻の輸送シミュレーションモデルを開発した。今後、このモデルを用いて東北海域の海底から採集した海産大型植物の起源について数値実験を行って検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画に記載した流れ藻の輸送シミュレーションモデルの開発に成功した。Filippi博士の直接指導のもと、複雑なパラメータ設定やシミュレーション結果の評価に対する的確なアドバイスを直接得られたことが開発スピードと精度の向上につながり、そして限られた外国渡航期間内でのモデルの開発に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、流れ藻の輸送シミュレーションモデルを用いて、東北海域の海底から採集したホンダワラ類のアカモクに着目し、その起源について数値実験を行って検討する。さらに、海底トロール網調査で採集したアカモクの遺伝子を解析し、東北アジアに分布するアカモクのミトコンドリアCox3塩基配列の地理的差異と照らし合わせて起源を推定する。そして、上記の数値実験と遺伝解析の結果を比較し、本研究で推定した堆積アカモクの起源の妥当性について検証する。これらにより、東北海域における堆積ホンダワラ類の起源藻場と、藻場から流出するホンダワラ類の海洋中深層への輸送過程を明らかにする。
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