2012 Fiscal Year Annual Research Report
C型肝炎ウイルス増殖に関与する宿主ストレス誘導性リン酸化酵素の解析
Project/Area Number |
12J06190
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
後藤 覚 東京大学, 医科学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | HCV / Kinase / Drug / Phosphorylation / Luciferase / Screen / Substrate |
Research Abstract |
本研究はゲノムワイドsiRNAスクリーニングによりC型肝炎ウイルス(HCV)複製を支持する宿主因子として同定されたストレス誘導性リン酸化酵素についてそのHCV複製、病原性支持機構を明らかにし、それを標的とした抗C型肝炎戦略創出を目的としている。本酵素に関してはこれまでの機能欠失変異体の解析より酵素活性と酵素自身のリン酸化活性化がHCV増殖、線維化シグナル促進に寄与することを明らかにしてきたが、本年度の研究においてはさらなる知見を得た。細胞内過剰発現系では本酵素のスレオニン残基におけるリン酸化を検出したが、それは酵素不活化変異、非リン酸化変異によって失われた。この結果は既報に一致して本酵素の自己リン酸化を示唆しており、本実験では関与する責任残基として酵素活性部位アミノ酸とリン酸化部位アミノ酸を提示することができた。加えて本系に肝癌細胞において酵素活性阻害が報告されている承認済治療薬を添加したところ、濃度依存的にリン酸化レベルが低下した。また当治療薬はHCV培養細胞感染系において抗HCV活性を有することをこれまでに見出しているが、本リン酸化酵素のノックダウンによりその濃度依存的抗ウイルス効果が減弱した。さらに共同研究機関の臨床検体において、本酵素の発現レベルがHCV慢性感染者で顕著に上昇していることが明らかになった。以上のことからHCV感染により発現が上昇した本酵素は自己リン酸化を含めた異常な活性化を経てHCV増殖と線維化シグナルを促進しているが、既に臨床的に用いられており本酵素の阻害活性が見出された承認済治療薬により、HCV増殖抑制と共に肝炎の病態改善が実現される可能性が示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
HCV増殖と病原性を促進するリン酸化酵素の活性化機構解明を進め、それを標的とした承認済治療薬の効果を示唆する結果を得た。これは本研究の目指す現実的な抗C型肝炎戦略を支持するデータである。加えて当初の計画通り本酵素自身とその基質リン酸化の薬剤による制御を目指す探索システムの準備が整い、次年度以降の解析の土台が据えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
HCV増殖過程と肝線維化シグナル伝達経路上の分子のうち本リン酸化酵素が直接影響を及ぼす標的をプロテオミクスにより探索する。また本酵素転写調節領域を連結したルシフェラーゼレポータシステムにより各種ケミカルライブラリを用いた酵素転写調節薬剤の探索を行う。同時に本酵素の基質候補探索と基質リン酸化解析、機能解析、そして薬剤による制御を目指す。さらに肝癌細胞株を用いたcDNAアレイ解析を行い、本酵素の生理的、病理的意義を検証する。
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Research Products
(2 results)