2012 Fiscal Year Annual Research Report
カルボニルイリドの逆電子要請型付加環化を機軸とする多環式天然物の不斉全合成研究
Project/Area Number |
12J06250
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
羽成 泰貴 北海道大学, 大学院・生命科学院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | エングレリン / カルボニルイリド / 1,3-双極付加環化 / 触媒的不斉合成 |
Research Abstract |
本研究は、キラルなRh(II)錯体を用いたカルボニルイリドの逆電子要請型不斉1,3-双極付加環化反応を機軸とした生物活性含酸素多環式天然物およびその類縁体の触媒的不斉全合成を目的とし、標的化合物として特に強力な抗がん活性を示す(-)-エングレリンAを設定した。(-)-エングレリンAに含まれるエキソ配置の8-オキサビシクロ[3.2.1]オクタン骨格は、α-ジアゾ-β-ケトエステルとビニルエーテルとの不斉1,3-双極付加環化反応により構築可能と考えられる。1mol%のRh2(S-TCPTTL)4を用い、イソプロピル基を組み込んだα-ジアゾ-β-ケトエステルとエチルビニルエーテルとの反応を行うと、望みとする付加環化体が良好なエキソ選択性かつ不斉収率95%で得られることが分かった。エキソ選択性の向上を目指しプロピルビニルエーテルおよびブチルビニルエーテルを用いて反応を行ったところ、若干のエキソ選択性の向上が確認されたが、不斉収率が低下してしまうことが分かったため、エチルビニルエーテルを最良の求双極子剤とすることとして合成の検討を行った。付加環化生成物を再結晶により光学純品とし、ジアステレオ選択的アルキル化による側鎖の導入およびアルドール反応による五員環の構築を含む数工程の変換を行うことで三環性アリルアルコールとした後、接触水素化やルテニウム酸化によるエトキシ基の酸化および二つのアシル基側鎖の導入などの変換を行うことで(-)-エングレリンAの触媒的不斉全合成を達成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目的の一つである(-)-エングレリンAの触媒的不斉合成を達成したことから、研究は概ね順調に進展しているものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
誘導体合成を視野に入れ、C4位置換基を共役エノンに対する1,4-付加により導入する合成経路の確立を目指し、エングレリンAの合成の検討を行う。また、イソプロピル基以外の置換基をもつα-ジアゾ-β-ケトエステルの不斉1,3-双極付加環化反応および各種有機銅反応剤を用いた共役エノンへの立体選択的1,4-付加反応を機軸として、天然物からの誘導が困難な4位や7位に種々の置換基を組み込んだエングレリン類縁化合物の合成を行う。
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